ヒロミ(撮影・弦巻勝)
ヒロミ(撮影・弦巻勝)

 40歳になった頃から約10年ぐらい、芸能界から離れていた時期があったんですよ。

 僕の芸能界でのやり方が、時代に合っていないのかなって勝手に思っていたんですね。芸能人って、自分の居場所があるのか、ないのか、常に考えていると思うんですよ。僕もそんなことを考え出して、ちょっと離れてみようかなって。

 ママ(松本伊代)には「パパの好きなようにやったら」って言ってもらえましたね。それでテレビに出なくなると、今度は「あんた、売れなくなったね」とか言われて(笑)。ただ、僕はそうは思わなかった。というのも、僕は僕で、ジムの経営だったり、楽しいことを見つけていたんです。

 “一般人”として生活してみて、見えてきたこともありました。それは、一般の方の世の中のほうがシビアだってこと。仕事を辞めたいヤツは辞めていくし、辞めてすぐに隣の店で働いている……なんてのもザラ。「えっ、そんな感じなの!?」って思いましたもん。それと比べると、芸能界ってけっこう、情に厚いところなんだってことが分かったんですよ。

 そんなときに、プロダクションの社長としてママのことを話してほしいって依頼が来て、それが結果的に復帰につながりました。約10年ぶりの芸能界だったけど、「俺はここで頑張るんだ」っていう気負いもなく、普通にスッと戻れましたね。“ダメだったら一般人に戻ればいいや”ぐらいの感覚でした。

 事業をやっているときに、もう一つ思ったことがあって。それは100%で仕事をしている人は、実はそんなにいないんだってこと。みんな、70〜80%ぐらいで上手にやっている。でも結局、そっちのほうが集団ではうまくいくんですよね。

 だから、芸能の仕事に戻った今では、70〜80%ぐらいがちょうど良いかなと考えています。若いときのガムシャラなスタンスよりも、後輩たちをアシストできれば良いのかなって。みんなの間を縫って「どうぞ、どうぞ」という立ち位置ですね。だから芸風も変わってきましたよ。引くときはちゃんと引けるようになった――完全に“大人”になったってことなんでしょうね(笑)。

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