■平野紫耀の表現力は無限の可能性を秘めている

 黒崎は、これまで情報を買った後は単独で仕事をしてきたが、白石(山本耕史/46)に出会ったことで新しい一面を見せた。御木本について現状を相談する黒崎に、生意気な言動や態度を見せたら天狗の鼻をへし折るかのように接する、白石の兄貴っぷりが気持ちいい。造形美ともいえる平野の高い鼻を遠慮なくつまんでいるのがほほ笑ましくて、そこに愛情を感じてしまう。

 この二人の芝居をもっと見ていたいと思わせる阿吽の呼吸は、相性の良さなどもあるが、山本の芝居に平野がしっかり応えられているからだろう。山本は、平野との実年齢差が20歳ほどだが、子役時代を含めた俳優歴でいえば、超ベテランになる。

 そんな山本と平野のやりとりに、ヒヤヒヤしたりホッコリできるのは、平野に相応の演技力があるからこそ。平野は、アイドルという仕事を選んだこともあって、同世代の俳優に比べると映像作品の出演数が少ない。それでも、これほど魅力的な芝居ができるのは、歌やダンスで表現することが、芝居でも生かされていることと、感受性が豊かであるからだろう。

『クロサギ』では、悲しみ、苦しみ、怒り、虚しさ、孤独といったマイナス感情がベースになるが、黒崎の感情に自身が持つ感覚をクロスさせ、的確に表現している。表現者という意味では、歌もダンスも芝居も通じるものがある。黒崎の心情に寄り添い、これだけの表現ができるならば、平野の芝居には無限の可能性を秘めているといえるだろう。

 平野の芝居をずっと見ていたい、ドラマに終わりなどこなければいいとさえ思ってしまう。(文・青石 爽)

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