ルームミラーを覗くと車の後部席に老人が!
そこから10メートルほど進むと、またもやライトの灯りの中になにかが浮かび上がった。
またか! 今度はなんだ!?
そう思いながら、そのなにかに近づいたとき、えっ!? と思った。なぜなら、それは先ほどの老人にそっくりな老人……いや間違いなく先ほどの老人である。作業着の襟に着いた大きなシミは先ほどもついていた。
どういうことだ!? とっさに思った。関わってはいけない!!
声をかけずに通り過ぎようとしたとき、老人が顔を上げた。通り過ぎる一瞬のことだったが目が真っ黒だったことはわかった。まるでくり抜かれたかのように……。
「ひ~ひっひっひっ……」
突然、老人が不気味な笑い声を上げた。あわててアクセルを踏み込んでスピードを上げると後部座席に違和感を感じた。基本、幽霊のたぐいは信じていないが……恐る恐るルームミラーに視線を移すと、先ほどの老人が後部座席にいる。真っ黒な目でオレのことを見ている。ひいい~! 普通じゃない!!
オレは必死に頭の中でお経を唱え続げた。そしてトンネルの出口に差し掛かったとき、老人は姿を消したのである。
それ以来、渓流釣りへ行くときは、絶対に「隧道」を利用しないことにしている。
『本当に体験した! 恐怖の心霊報告書』¥700(税抜)双葉社