太平洋を米国と二分する野望

「実は、それこそが中国の狙いです」と断言するのは防衛省関係者だ。
「中国政府の意を受けた漁船が他国領海に侵入して不法操業し、トラブルが起これば、これ幸いと自国漁民保護の名目で中国政府が猛抗議してきます。だほもし、船員拿捕といった事態に発展すれば、中国海軍が出張って圧力。相手国が屈しなければ軍隊を上陸させて、紛争下の島を制圧する作戦です」(前同)

つまり、漁船団大挙襲来の、もう一つの狙いは"領土拡大"だというのだ。
実際、中国は、これまで南シナ海で侵略行為をさんざん行ってきた。ベトナム領海内での石油掘削や、フィリピン南沙諸島の占拠これらと同様、今、その"魔の手"を日本にも本格的に伸ばし始めたという。
「それが、日本領海内での赤サンゴ密漁であり、尖閣での違法操業の数々となって表れているんです」(同)

不穏な動きは、これだけではない。
04年に中国の原子力潜水艦が石垣島周辺海域を領海侵犯した事件が発覚した。以降、中国の潜水艦隊は鳴りを潜めているように思えたが、実際は日本近海を中国潜水艦がうろうろしていることは、防衛関係者の間では常識。
やはりというか、ここ最近になって日本近海周辺でしきりにキナ臭い動きを見せ始めているという。

軍事評論家の神浦元彰氏が言う。
「習近平率いる中国海軍は、新たに対米防衛線を定め、現在、その構築に邁進(まいしん)中です。この対米防衛線構築が成れば、極東勢力図は根底から変わり、今後、新たな紛争のタネとしてクローズアップされるのは火を見るより明らかです」
ちなみに、中国が描く対米防衛線とは、まず近海防衛を目的とした"第一列島線"。これは九州を起点に沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオ島に至るライン。尖閣諸島に対する中国の挑発は、このラインを確保する工作の一環だと言えよう。
そして、野望の完成図が"第二列島線"だ。

これは、伊豆諸島を起点として小笠原諸島、グアム・サイパン、パプアニューギニアに至るライン。
近年の小笠原での密漁は、中国がここにも手を伸ばし始めた表れなのだ。それが完成すれば、地図を見ればわかるとおり、日本の半分までもが"勢力域"に置かれることになる!

中国の最終目的は、この第二列島線の完全制圧なのだという。
「近い将来、習中国はこの列島防衛ライン内を自国領海と宣言し、太平洋の権益を米国と二分する野望を抱いています」(神浦氏)
そのとき……日本が無事であるはずはないだろう。

海洋強国を掲げ、領土的野心をむき出しにする中国。
太平洋の支配の布石はすでに打たれているのだ。

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