同映画で4度目の日本アカデミー賞を受賞した高倉健だったが、最初は"若い人に贈ってください"と受賞を固辞していたという。
「ところが、授賞式の前日に電話がかかってきて"今、会えますか"と言うんです。実は、私の家の前から電話をかけてきていて、OKすると、すぐに玄関先にきて、"賞を受け取ります"と。自分が辞退したら、支えてくれたスタッフたちが遠慮して、賞を受け取りにくくなってしまう。それで受けることにしたんですね」
『鉄道員』は海外でも評価され、健さんはモントリオール世界映画祭で、日本人初の主演男優賞に輝いた。
「演技もさることながら、CMで使われた"不器用ですから"のセリフが代名詞になるなど、謙虚な人柄でも愛されました。ただ、その"素顔"は不器用どころか、常に周囲に気を遣う人でしたね」(前出・芸能記者)

ファンだけでなく、共演者やスタッフが健さんに惚れてしまった逸話は、枚挙にいとまがない。遺作となった2012年の『あなたへ』の現場もそうだった。
「初共演の綾瀬はるかも舞台挨拶で、"ホテルの部屋に帰ると、健さんからの手紙とフルーツの盛り合わせがあった"と告白。一瞬でハートを撃ち抜かれたようです」(夕刊紙記者)
同じく『あなたへ』で共演したビートたけし。高倉健とたけしの初共演は、85年の『夜叉』まで遡る。
「深夜に撮影現場入りしたたけしさんを、雪の中で健さんが花束を持って出迎えたというんです」(前同)
これには、たけしも大感激。以来、"健さん""たけちゃん"と呼び合う仲に。
「27年ぶりの共演となった『あなたへ』でも、健さんはロケ現場の駅まで迎えに行っていました」(同)
生涯で205本もの映画に出演し、昨年は映画界初の文化勲章を受章した"不器用な男"。喝采の中、58年に及ぶ役者人生に今、幕が下りた――。

本日の新着記事を読む

  1. 1
  2. 2