師走の決戦に向け、かつての日本の顔が水面下で暗躍している。大勲位、変人、宇宙人、殿様、ドジョウ…の思惑は?

安倍首相による"自爆解散"か、それとも……。
各党、各政治家たちの生き残りを賭けた、衆院解散・総選挙(12月2日告示、同月14日投開票)が、11月21日、安倍首相によって高らかに宣言された。
「首相は、この解散を"アベノミクス解散"と命名。安倍政権発足以来、2年近くにわたって断行してきた経済政策(アベノミクス)について、国民の信を問うと、大勝負に出ました」(全国紙政治部デスク)
これに対し、野党側は「大義なき解散だ」と猛反発。「野党は、国民の賛否が分かれる原子力政策や、安全保障問題にも争点を広げ、安倍政権2年間全体の審判を仰ぐ戦略です」(前同)

解散総選挙について、朝日新聞が実施した全国緊急世論調査(11月19~20日)では、同政権の経済政策を〈失敗だ〉と回答した人が39%。〈成功だ〉の30%を上回った。また、首相が胸を張る〈(賃金や雇用に)結びついている〉と答えた人は20%。「そうは思わない」の65%に、大きく水を開けられる結果になった。
「選挙結果に直結する内閣支持率も39%と、同新聞が11月上旬に実施した前回調査から3%ダウン。不支持率は4%アップの40%と、支持と不支持が逆転する、首相にとっては思わぬ結果です」(自民党中堅議員)

その安倍首相は先日、生出演したテレビの報道番組(TBS『NEWS23』=11月18日放映)で、これら世論の動向について、
「同番組で紹介された街の声、たとえば"景気がよくなったとは思えない""誰がもうかっているんですかねぇ"に慌てふためき、あの甲高い声で"おかしいじゃないですかっ!""全然、(庶民の)声に(ママ)反映されてない"と、早口でまくしたてたんです」(テレビ局関係者)
そんなトップリーダーのろうばい狼狽に、自民党の某幹部は「(選挙に響くから)もう首相をテレビに出すな」と、怒り心頭だったという。
「とはいえ、首相の自爆に、野党側が勢いづいたかというと、さにあらず。 出馬すれば、確実に旋風を起こせると期待されていた橋下徹大阪市長が、早々に撤退宣言。これで、第三極ブーム到来の夢は、一気に潰(つい)えてしまいました」(ベテラン政治記者)

そんな"燃えない"総選挙を横目に、ギンギンに燃えている男たちがいる。
「功成り名を遂げた元首相たちです。彼らが"あの栄光の日よ再び!"とうごめきだしているんです」(同)
その筆頭が安倍内閣の第1順位指定大臣(副総理)であり、現在も財務大臣、金融特命大臣(デフレ脱却担当)の華々しい地位にある麻生太郎・元首相(首相在位期間08年9月~09年9月=以下同)だ。
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が言う。
「今後、安倍政権の支持率が極端に下がる、もしくは首相の体調に大きな変調が現れるなどの緊急事態には、"安倍政権を継続していくのは俺以外にない"と、ポスト安倍に麻生氏が名乗りを上げるのは必定です」
政治評論家の浅川博忠氏も、「今回の総選挙で、自民党が50議席減となるなど大敗した場合、首相の責任問題に発展します。そうなれば、常日頃から"安倍さんだって再登板できた。なら俺だって"との野望を隠さない麻生氏が、ポスト安倍に打って出るのは火を見るより明らかです」

実際、ここにきて"いざ、その時"を強く意識。手勢拡大に一直線という。
「近い時期の大島派との合併が模索されています。これが成れば総勢47人。岸田派42人を抜き、晴れて党内第3派閥に躍進します」(前出・政治部デスク)
その麻生氏は、解散の直前まで"消費税10%決定直後、安倍内閣の支持率が急降下。政権は耐えられず、12月中旬、安倍首相花道退陣"とのシナリオを描いていたという。それが、
「首相の消費増税先延ばし解散で、消費増税が最優先課題である財務大臣としての顔を潰されたうえ、描いたシナリオもご破算に。それでも現在は"選挙でコケたら俺が!"と作戦を変更。早晩、その出番はやって来ると信じて疑わない状況だとか」(前同)

この麻生元首相に負けず劣らず、「好機到来」と舌なめずりしているのが"大勲位"中曽根康弘・元首相(82年11月~87年11月)。
「96歳となった現在、狙っているのは首相復帰ではありません。孫の康隆氏に地元の選挙区を継がせ、"中曽根王国を再び盤石に"との老いの一念に燃えているんです」(地元の群馬県議)
この康隆氏は現在、父・弘文元外相(参院議員)の秘書を務めている。
「安倍改造内閣の華として登場した小渕優子・前経産相がスキャンダル辞任したのを好機と、小渕氏の選挙区群馬5区に康隆氏を殴り込ませ、あわよくば同選挙区を乗っ取ろうともくろんでいるんです」(地元の自民党群馬県議)

さらに、嘘かまことか、
「小渕疑惑発覚当初、"ワイン問題(小渕氏が地元有権者にワインを配った公職選挙法違反容疑)"をリーク。揺さぶりをかけたのは、中曽根事務所関係者だ、との声まで地元ではささやかれているんです」(前同)
中曽根氏が執念を燃やすのは、なぜか? 群馬5区は中選挙区(旧群馬3区)時代、中曽根元首相と福田赳夫・元首相、それに小渕恵三・元首相が加わって"上州戦争"と言われた激しい選挙戦を展開したゆかりの地だからだ。
「ただ、その激戦地も、故・竹下元首相に"永久比例1位"を確約されて数年で、草刈り場になり、地盤が沈下。その後、小泉政権時にほご比例名簿の永久1位も反故にされ、事実上の引退勧告を受けた。それらに対する悔しさから、目の黒いうちに選挙区を奪還したいのでしょう」(前出・浅川氏)
総選挙で政界が揺れている今、中曽根元首相は"王国復興"のチャンスとばかりに暗躍しているのだ。

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