「焦らず治療に専念し、開幕後に一軍昇格すればいい」という自己プランでしたが、闘将・上田監督がそれで「ウン」とは言わなかった。監督曰く「即戦力(社会人出身)のドラフト1位が二軍スタートでは格好悪い」。この理由で僕の一軍スタートが決まったのです。

足は治っていません。痛いです。上田監督も「足に負担がかかるメニューはやらなくていい」と仰ってくださいましたが、この声は現場首脳には届いていません。

骨折しているので右足を折るスライディングはできません。スライディング練習はヘッドスライディングのみです。

すると、あるコーチは「パンチ、お前はスライディングができないのか?」と聞いてきたのです。僕はきちんと事情を話しましたが、彼の頭の中は「パンチはスライディングができない」とインプットされたのです。

●ああ、右足の骨折の影響で…

それだけではありません。打撃、守備にも骨折の影響があり、間違った認識が広まりました。守備に関しては外野ノックを受ける時、本来なら右足スタートの左方向の打球が怪我の影響で左足スタートになる。つまり、全ての打球に対して左足始動なのです。そうなると、外野守備コーチは黙っていません。「佐藤には致命的な欠陥がある。左足からでしかスタートが切れない」と口外するのです。

バッティングに関しては右足が痛くて踏ん張れません。思い切りのいいスイングができないので左方向に流すバッティングばかりになる。そうすると、「佐藤は引っ張るバッティングができない。ボールを当てにいくクセがある」となったのです。結局、僕の評価は「打てない。守れない。走れない」の三重苦…。

このことから声を大にして言いたい。「ルーキーも自分のペースを知り、それに従うこと」。1年目は「痛い」「キツイ」とは言えません。そのためにも“背伸び”は厳禁。無理して上(1軍)に加わるのでなく、身の丈にあったところで、ゆっくり調整してもらいたいですね。

やっぱり、野球が一番!

パンチ佐藤(ぱんち・さとう)プロフィール

1964年12月3日生まれ
亜細亜大学から熊谷組を経て、オリックスにドラフト1位で入団。プロ野球時代、トレードマークのパンチパーマと独特な発言で人気者に。引退後はタレントとしても活躍し、2015年シーズンからBCリーグ『武蔵ヒートベアーズ』の宣伝本部長に就任した。

本日の新着記事を読む

  1. 1
  2. 2
  3. 3