オランダのドレンテ博物館が所有する仏像をCTスキャンにかけたところ、中に約1000年前に死亡したとされる僧侶のミイラが入っていたと、昨年の12月にオランダのニュースサイト「NL Times」が報じ、日本でも最近、話題になっている。

このミイラは、柳泉(Liuquan)と呼ばれる、宋朝の位の高い僧侶が瞑想を続けて絶命し、そのままミイラになった即身仏を銅像に入れたのではないかと考えられている(遺体を麻布で覆い固めて人工的にミイラ化をはかった「加漆肉身像」ではないかという説もある)。

即身仏とは、飢饉、天災、疫病などにより、餓え苦しむ人々を救うため、厳しい修行の末、自らの肉体をミイラにして残した僧侶のことだ。
具体的な修行内容はまず山小屋などに籠もり、5種類の穀物(米、麦、アワ、キビ、大豆)を3年食べずに過ごす「五穀断ち」から始まり、さらに、3年を木の実だけで食べて過ごす「木喰行」を千日から3千日続ける。
続いて、木の実を食べるのもやめ、水だけを飲んで身体の中をキレイにすると、座ったままの姿で棺や石室の中に入り、呼吸用の竹筒を付けて地中に生き埋めにされる「土中入定(どちゅうにゅうじょう)」となる。
僧侶は暗闇の中で断食をしながら鐘を鳴らし読経するが、やがて音が聞こえなくなると死亡したとされ、3年ほど経ったら掘り出す。この遺体を乾かしてミイラ化し、新しい袈裟を着せたのが即身仏だ。
ミイラ化するためには「木喰行」のときに樹皮を食べるのが非常に重要で、死後に防腐剤の役割を果たす。実際、それを怠ったために腐ってしまい、即身仏になり損なった僧侶もいたそうだ。

こうやって強固な意志と厳しい修行によって達成される即身仏は、日本でも出羽三山などにいくつか見られる。こちらも人々を救うため僧侶は即身仏になったのだが、江戸時代には生臭い騒動が理由で即身仏になったこともあったようだ。

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