家族内で後見人を決めておく

A男さん(77歳・妻は死去)は、息子夫婦(妻は専業主婦)、中・高校生の孫2人と同居しているが、平日の週5日、昼間は近所の介護老人保健施設に通い、機能訓練を受けている。
1回約1万円(6~8時間未満)だから、月20回として計約20万円。もっとも、要介護度3のA男さんの月利用限度額は約27万円だから、すべて介護保険で賄え、自己負担は1割の約2万円で済む。

「A男さんのように、平日すべてデイケアを受けているのは、奥さんなど介護を支える家族のストレスを軽くする狙いもあります。また、特に独居のケースでは外に多く出ればそれだけ話し相手も増え、それが刺激になり認知症の進行も抑えられます」(帆角氏)

また、仕事の関係で遠方に住んでいるなど、諸事情から親の面倒を見られないという人もいるだろう。
その場合、介護保険の対象外だが、格安で使える(16)サービス付き高齢者向け住宅を利用するのも悪くない。
「特別養護老人ホームや介護老人保健施設は格安でサービスもいいですが、人気が高く10年待ちなんてところもあります。とはいえ、有料老人ホームはいまだに入居一時金を何百万円と取るところが多く割高です。その点、入居者が高齢者専門、バリアフリーで、昼間は医師ないし看護師、少なくとも介護専門家が常駐しながら、普通のマンション並みの賃料で住める、サービス付き高齢者向け住宅は確かに魅力です」(同)

また、住み慣れた家を離れたくないという親の場合は、24時間対応の定期巡回型訪問介護や、夜間でもヘルパーが急行してくれるサービスを利用するのも良い。これらはすべて、介護保険の対象となる。

だが、認知症になった際に生じるのは介護費用だけではない。治療費や入院費も負担となってくる。その際に活用したいのが(17)高額療養費制度だ。
「認知症が進み、寝たきりで長期入院となった場合、一般所得者なら、どんなにかかっても月に約8万円以上は払う必要がありません」(前出の光嶋氏)

また、(18)精神障害者保健福祉手帳も申請したい。認知症もその対象で、バス代や電車賃が半額になったり、等級にもよるが介護者は路上駐車ができるほか、各種税制優遇も受けられる。
それから、親が入っている(19)生命保険の説明をよく見てみることも重要だ。契約内容によっては、死亡保険金と同額の高度障害保険金が設定され、認知症がそれに該当する場合もあるからだ。

最後は万一のときに備えて、(20)任意後見制度を活用し、財産の目減りを防止しておこう。
「将来、認知症で判断力が衰えた時に備え、誰が自分に代わって財産管理をするか、本人が元気なうちに決めておく制度です。本人と後見人を引き受ける者が、一緒に公証役場に行けば、その取り決めを公認する、公正証書を作成してくれます。後見人を務めるのは息子など、家族が一般的です」(光嶋氏)

まさに、備えあれば憂いなし。これらを参考に、親の認知症にも慌てず、正しく対処していただきたい。

本日の新着記事を読む

  1. 1
  2. 2
  3. 3