それよりも桜子が耐えられなくなったのは、少しでも桜子が嫌がると壁を殴ったり家具を蹴り倒したり、食べ物を床に叩きつけて踏んだりすることだ。
直接的に桜子を殴ったことは一度もないが、いつ殴られるかわからないと常におびえるようになった。殴られなくても、ケンカの後は部屋が無茶苦茶になってしまう。直接会えば今度こそ殴られると感じた桜子は逃げ出し、電話もラインも着信拒否にした。
桜子も何度か会ったことのある、春樹の上司に間に立ってもらった。上司に、桜子の気持ちを伝えてもらったのだ。すると春樹は、上司にも激昂した。
「なぜ桜子は直接会ってくれない。そして俺は一度もあいつを殴ってない」
もはや、桜子にとって春樹は恐怖そのもの、いや、悪霊に近いものとなった。死ぬまで責められる。いや、死んでも取り憑かれると予感した。
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