最注目部隊が駐屯する長崎県

都構想に向けて走り出した"西の都"大阪は、第38普通科連隊らが守護神。山陰・中国地方では、広島と山口が精強だ。
「呉には、横須賀と並び海自の潜水艦があります。それと余談ですが、艦で作られる料理は呉がダントツで美味しい。その理由は隠し味に"オタフクソース"を使っているからなんです(笑)」(菊池氏)

自衛隊の最高指揮官である安倍晋三首相の地元・山口も、なかなかの戦力。
「第17普通科連隊が陸を守り、米海兵隊と共同使用する海自の岩国航空基地は、P-3C哨戒機等が控えています。P-3Cは別名"サブマリンハンター"。短魚雷に対潜爆雷、強力な対艦ミサイルも発射可能です。P-3Cで遠方から対艦ミサイルの集中攻撃を行えば、中国海軍の虎の子空母『遼寧』だって撃沈できますよ」(黒鉦氏)

続いて四国だが、この地域は日本列島の"下腹"と言える部分のため、敵の侵入は想定しにくい。したがって、陸海空とも自衛隊の配備は手薄になっている。
「徳島は地元の要請により、自衛隊駐屯地を誘致しており、12年に徳島駐屯地ができたばかり。自治体が自衛隊を誘致するのは、激甚災害が発生した際に地元住民を守るという意味合いがあるんです」(黒鉦氏)

自衛隊は他国の侵略に備えるだけではないのだ。
四国とは打って変わり、九州・沖縄は今、もっとも手厚い戦力が投入されている地域。むろん、南西方面から魔の手を伸ばしている中国に備えるためだ。
「福岡の築城(ついき)にはF-15JとF-2の戦闘機部隊があるため、対戦闘機、対艦戦闘の両方が可能です。弾道ミサイルを撃墜可能なPAC(パック)3も展開していますから、鬼に金棒でしょう。佐賀には島嶼防衛でも有効な戦力となる"世界最強戦闘ヘリ"AH-64Dアパッチがあります」(黒鉦氏)

強豪県がひしめく九州地区で、最も注目を集めているのが、長崎の相浦(あいのうら)駐屯地の西部方面普通科連隊、通称・西普連(せいふれん)だ。
「彼らは"日本版海兵隊"。中国に南西部島嶼を奪われた際に奪還作戦ができる唯一の部隊なんです」(菊池氏)

前出の古是氏も、
「米海兵隊と合同で水陸両用作戦の訓練を行っています。小銃を担いで遠泳による上陸作戦も可能な最精鋭たちで、トライアスロンの選手以上ですよ」
と太鼓判を押す。長崎には巨大軍港・佐世保もあり、海戦能力も極めて高い。宮崎には新田原基地に空自戦闘機部隊の教導隊がある。
「エース級の腕前のパイロットが集い、戦闘機戦闘の技術を研究しています。実戦投入されたら、一番強いんじゃないでしょうか」(菊池氏)

大分、熊本、鹿児島も軒並み充実した戦力を誇っているが、特に注目したいのは、その"士魂"だという。
「この地域の隊員と飲むと、すぐ西郷どんの話を熱く語ります。薩摩隼人に肥後もっこすの伝統は健在ですよ」(菊池氏)

北海道から九州までを眺めてきたが、最後は日本の南端・沖縄。前出の井上氏は、こう断言する。
「島嶼防衛は陸海空を問わず、現在、全自衛隊の最優先課題です」

その沖縄、陸自は第15普通科連隊、空自は対空ミサイルPAC3に、F-15J戦闘機部隊もそろえる。
「来年の3月に、日本最西端の与那国島に陸自の駐屯地が作られます。地元から熱心な誘致があり、昨年9月には、そのために住民投票もやりました。与那国は中国に最も近い日本の領土です。こうした離島をどう守るか……これが我々に課せられた喫緊の課題です」(陸自幹部)

今、この瞬間も、あなたの町の自衛隊は"その時"に備えている――。

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