基地移設を巡り、対立を深める総理と知事。その混乱に乗じ、かの国が日本最西端の島に魔の手を伸ばしている。民意をも巧みに操る工作活動の全貌!

沖縄が揺れている。
「在日米軍普天間基地の辺野古移設をめぐって、移設を強硬に進めようとする政府と、沖縄の翁長雄志(おながたけし)知事がガチンコ対決。これまでのように"最終的に補助金で解決"する策はもはや通じず、互いに振り上げた拳の下ろしどころが、見えない状況です」(全国紙官邸詰め記者)

なぜ、こんなにも、こじれてしまったのだろうか?
発端は昨年11月、"オール沖縄"を合言葉に辺野古移設絶対反対を掲げた、翁長新知事の誕生だった。
「翁長知事はもともと保守系で支持母体は自民党層。ですから、最後は政府と妥協点を探ると見られていました」(全国紙政治部記者)

だが、そんな政府の甘い期待はどこへやら。翁長知事は、辺野古移設反対の姿勢を、現在に至るまで頑なに貫き通しているのだ。
「そればかりか、4月14日には自民党ハト派の重鎮・河野洋平元衆院議長とともに中国・北京を訪問。現在、尖閣諸島をめぐって中国と緊張状態にあるにもかかわらず、2人は中国ナンバー2の李克強(りこくきょう)首相と会談までしています。3月に谷垣禎一自民党幹事長たちが訪中した際は、李首相との会談は実現していません。中国側の翁長知事らに対する歓迎ぶりは、異例ですよ」(辺野古移転強行派の自民党中堅議員)

翁長知事は、この熱烈歓待がよっぽどうれしかったのだろうか、同会談席上、
「沖縄はかつて琉球王国として、中国をはじめ、アジアとの交易で栄えた。当時、福建省から500~600人が帰化し、多くの技術や文化を伝えてくれた」
と、関係の深さを強調している。

前出の議員は、
「帰国後は、那覇空港で記者団を前に"自立の道を歩む重要な局面だ"と、沖縄"自立論"までぶち上げました。いざとなれば"沖縄独立"も選択肢にあると知事が言い切ったと、政府は捉えています」

この"自立論"に慌てたのが安倍総理だった。
これまで翁長知事の会談要請を完全に無視していたが、4月5日の菅義偉(すがよしひで)官房長官-翁長会談から日を置かずして、安倍-翁長会談(4月17日午後)の設定を余儀なくされた。

「ただし、この会談でも2人の主張は平行線のまま。とはいえ、今や沖縄独立という切り札を手に入れ、安倍政権は言うに及ばず、中国政府をも動かす翁長知事に、沖縄県民は"ニューヒーロー誕生"と沸いています」(地元紙記者)

さらに、翁長知事に勇気づけられたのか、沖縄独立を主張する声が次から次へと聞こえ始めているのだ。
たとえば、糸数慶子(いとかずけいこ)参院議員(沖縄大衆党)。数回にわたって国連の人種差別撤廃委員会に琉球王国時代の服装で出席し、
「沖縄県民は、日本と異なる琉球民族だ。辺野古移設は、沖縄の先住民族の権利を侵害している」
と"琉球独立"を主張。

さらに、照屋寛徳(てるやかんとく)衆院議員(沖縄2区・社民党)も、自身のブログで「沖縄は、日本国から独立したほうが良い、と真剣に思っている」と意見を述べ、さらに、
「第2次世界大戦での沖縄戦で、本土防衛のために"捨て石"にされた沖縄の人々の悲しみは、いまだ根深いものがあります。そこに、今度は日本の安全保障のためとはいえ、辺野古移転で再びの犠牲を沖縄に強いる。あんまりだ、というのが沖縄県民の偽らざる気持ちです」

こうした理由に加え、全国最低の所得と最悪の失業率も、県民の反本土感情を後押ししているという。そこに、つけ込もうとしているのが中国だ。
「北京を訪問した翁長知事への熱烈歓迎も、懐柔工作のひとつ。また、6月に福建省で開催される国際会議にも、翁長知事が正式に招待されています。アジア各国の閣僚級が集う会議に招くことで、中国は沖縄を"独立国"であると考えていると言いたいんでしょう」

こう語るのは、通信社の外信部記者。また、中国事情に詳しい評論家の宮崎正弘氏はこう言う。
「すべては中国の軍拡路線から発しています。現在、中国は対米防衛網として"第1列島線"と"第2列島線"を設定。沖縄と密接につながっているのがこの第1列島線です。これは九州を起点に沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオ島に至る長大な中国防衛線です」

その前進拠点が沖縄なのだ。さらに、軍事評論家の神浦元彰氏がこう続ける。
「中国が、太平洋進出の際、必ず通るのが沖縄本島と宮古島間の海峡。中国の軍艦、潜水艦、軍用機のすべてが、ここを利用します。ですので、"太平洋利権"を米国と二分しようとの野望を抱いている中国には、"沖縄占拠"は欠かせない最重要事項です」

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