「メジャーに行く理由は金」

プロ野球史に偉大な足跡を残した2人の御大。
球界きっての理論派でID野球の提唱者として知られる野村氏は、南海ホークスの4番・捕手として活躍。パ・リーグで9度の本塁打王、65年には戦後初の三冠王を獲得。監督としても南海、ヤクルトで5度のリーグ優勝、3度の日本一を経験した名将だ。

張本氏は東映フライヤーズの主砲として、パ・リーグで7度の首位打者に輝いたスラッガー。巨人に移籍した76年と翌77年には第一次長嶋政権の連覇に貢献。通算安打数3085本は、日本プロ野球記録である。ここで、プロ1年目は東映、2年目に南海に移籍した経歴を持ち、2人と縁の深い野球評論家の江本孟紀氏は、こう話す。
「2人とも能ある鷹には違いないんですが、ノムさんは"能ある鷹は爪を隠さない"タイプ。ハリさんは"能ある鷹は爪を隠す"タイプなんです。野村さんの緻密な野球理論はつとに有名ですが、暴れん坊のイメージが強かった張本さんの野球に対する洞察力も素晴らしいものがあった。そうでなければ、あれほど多くのヒットを打つことはできませんよ」

そんな2人に共通しているのは、大のメジャーリーグ嫌いの点だろう。
野村氏はかつて、こんな身も蓋もない話をしている。
「メジャーに行きたがる奴は自分を一番高いレベルで試したい、なんてカッコイイことを言ってるけど、本当の理由はお金ですよ」

一方の張本氏も手厳しい。
「大リーグの野球はレベルが低いよ。バッターもヘボばっかりだ」

2人には、ベースボールより野球のほうが上、という同じ思いがある。
「まあ、古い時代の人たちですから(笑)。昔よりは減ったとはいえ、ステロイドなどに近い筋肉増強剤を常用する一部メジャーリーガーに対して、軽蔑と嫌悪感を持っていることで一致してます」(スポーツ紙デスク)

メジャーリーグに対する反発は、日本人メジャーリーガーに対しても向けられる。天才打者イチローに対する激辛評がその典型だ。
野村氏は「彼は天才的な選手」と認めながらも、
「イチローは自己中なバッター。なぜなら、彼はフォアボールを選ぼうとしない。なんでもかんでもヒットを打つことしか考えていないのは、1番打者としてどうなのか」

野村氏とイチローの因縁といえば、96年のオールスター第2戦での「ピッチャー・イチロー」事件が有名だ。全パの仰木彬監督が9回表2死、バッターが松井秀喜の場面で投手にイチローを起用。これを嫌った全セの野村監督が、松井の代打に投手の高津慎吾を送っている。
「ノムさんは、お祭りだからとイチローを投手に起用した仰木さんにも、怒りをぶつけていましたね。イチローをしっかり教育しないと、チームを私物化するようなとんでもない選手になってしまうぞ、という憤りでした」(スポーツ紙ベテラン記者)

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