声にも会話の内容にも覚えがないので無視していたら、肩に手を置いて何度も話し掛けてくる。振り返るとわしの母親ぐらいのオバさん……ていうか、おばあちゃんに近い。とにかく知らない人だし、大事な確変中なのでガン無視。それでもオバさんの口撃は止まない。

「○○駅で待ち合わせって、言ってたじゃない!」
「こんなババアだから、そのまま帰っちゃったの?」
「いっぱいしようって、出会い系で言ってくれたでしょ。いつするの?」

 もうデタラメにも程があるので、意地でも無視してたけど、周囲の視線が全員わしに集中。「知らずにバアサンを口説いて、女を騙して逃げた」そんな風に思われてるに違いない。仕方なく振り返って「人違いです。それ以上言い寄るなら店員さんを呼びますよ」と忠告。

 オバさんは立ち去り、確変も13連まで伸びた。さて仕切り直して勝負再開! と思いきや、持ち玉のドル箱が足りない。足元に11箱と手元に1箱。あと1箱はどこへ消えたのか!? 店員に通報して防犯カメラをチェックしてもらうと、「お知り合いの女性の方が共有で持って行かれましたよ」。まさかあのオバさん……!?

 店員に知り合いではないことを説明し、一緒に捜索すると『海物語』のシマでオバさんを発見。わしの玉で堂々と打ってます。しかもほとんどノマれかけ。盗んだ玉を換金して逃げずに店に居座るとは、何とも豪傑。そのまま迎えに来たパトカーで警察署へ。わしも被害届を提出するために同行しました。

 盗られたのは3円交換店の2千発なので、金額に直すと約6千円。ところがここは警察署なのであくまで貸玉料金4円で算出。被害額は8千円となって賠償されることに。儲かっちゃいました(笑)。

 オバさんは一銭も持っておらず、身元引受人がお金を返してくれるとのこと。30分ほど待っていると、のっしのっしとラオウのような大男が登場。そしてわしに向かって叫びながら猛ダッシュ!

「オレの女を触って逃げたのはお前かー!!」

 何が何だかわかりませんが、大勢のおまわりさんが止めに入ってなんとかセーフ。どうも盗人オバさんは「痴漢にあったから迎えに来てほしい」と呼び出したらしい。何から何までデタラメのホラ吹きなのか。

 あとで聞いたところによると、あのオバさんは美人局(つつもたせ)で、いつもは最後にあのラオウおじさんがトドメを刺す役割らしい。男を騙す役目のオバさんは何人もいて、競い合わされていたもよう。売り上げがさえないオバさんは、パチンコ客を騙してホテルへ誘い込もうとでもしたのでしょう。ところがわしに無視されたので、玉を盗んで増やそうと目論んだのか……。なんとも特殊な事件でした。

 パチンコホールは楽しい場所ですが、多くのお金が行き来する鉄火場でもあります。財布や持ち玉、残高カードの取り忘れにも注意です。自分の身は自分で守るべし!

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