中村竜太郎(元週刊文春記者)「僕らの仕事は、権威を笠に着ている人に石を投げること」スクープをもぎ取る人間力の画像
中村竜太郎(元週刊文春記者)「僕らの仕事は、権威を笠に着ている人に石を投げること」スクープをもぎ取る人間力の画像

 今でこそ、元週刊文春の記者、ジャーナリストという肩書で、テレビなどに出させてもらっていますが、大学を卒業したばかりの頃は、アパレルメーカーで働いていたんです。仕事は楽しかったんですが、別の仕事もしてみたくなり、出版社の中途試験を受けたら、ファッション誌に配属される予定で採用されたんですが、急きょ空きがなくなったとかで、女性週刊誌に配属されたんです。

 偶然にも記者という仕事に就くことになったんですが、当時はパパラッチ全盛の時代。記者は土足で人の家に入り込むっていうより、土足で入り込んで、裏口まで行っちゃうような傍若無人な人ばかり。普通の会社員だったので、ものすごいカルチャーショックを受けましたね。

 職場の人間たちの気性も荒っぽかった。校了のときは、一升瓶を置いて酒盛りしながら仕事しているんですよ。そのうち、喧嘩が始まって記者が血だらけになっていたり。

 僕は日焼けするのが好きだったんですが、それが気に入らなかったのか、ベテラン記者が、初対面なのに、“テメェの顔が気に入らねえ”っていきなりすごんできたこともありましたね(笑)。先輩のカメラマンと張り込んでいたとき、咳払いするだけで“気付かれたらどうすんだ”って殴られたり。咳払いよりも、カメラマンの怒鳴り声の方が、よっぽどうるさかったと思うんですけどね(笑)。

 週刊誌では週一回、ネタ決めの会議があるんです。各自が集めてきたネタを回し読みして、編集部の人たちで、○と×を書きこんでいくんですが、ほとんど匿名なんですよね。俳優Xと女優Yが熱愛中だとかって。

 僕は正直に実名で書いたんですが、全員から×印をつけられた。そしたら、次の日に、僕のネタがスポーツ紙の一面に出ているんですよ。不思議なことが起こるもんだなと思っていたんですが、今、思えば、ネタを横流しされていたんですよね。

 もう食らいついていくのに、必死でしたよ。大学を卒業してすぐに出版社、新聞社に入って記者をやっている人たちと比べたら、別の仕事をやっていた分、遅れをとっているわけですから。どうしたら取り返せるかって言ったら、やっぱり、誰よりも粘って取材したり、一生懸命にやるしかないんですよね。

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