羽生善治、村山聖、森内俊之…将棋界「羽生世代」の青春の画像
羽生善治、村山聖、森内俊之…将棋界「羽生世代」の青春の画像

 近年注目される将棋界において、ひときわ輝く「羽生世代」。全タイトルを独占し、将棋界の歴史を変えた男。29歳で夭折し、伝説になった男。盤上で彼らはいかに戦ってきたのか――。

 正確な読みで“天才”と呼ばれながら、29歳で逝去した村山聖九段。その壮絶な生涯は大崎善生の小説『聖の青春』で知られ、このたび松山ケンイチ主演で映画化、11月19日に公開された。ライバルの羽生善治を東出昌大が演じることも話題となった。

 村山は1969年生まれ。70年生まれの羽生善治三冠を代表とする、いわゆる“羽生世代”に属する棋士だ。他にも森内俊之九段(70年生)、佐藤康光九段(69年生)、丸山忠久九段(69年生)と4人の名人経験者を輩出し、藤井猛九段(竜王ほか・70年生)、郷田真隆王将(71年生)など、数多くのタイトル保持者を生んだ。将棋を題材とした大ヒット漫画『3月のライオン』の監修者・先崎学九段も70年生まれだ。

 40年以上にわたって棋士たちの姿を撮り続けてきたカメラマン・弦巻勝氏はこう語る。「強い人は若い時から違っていますね。羽生さんも村山さんも突出していた。実力があると、年齢も関係なく周囲は一目置く。羽生さんは中学生の時からレンズ越しの姿が綺麗で、勝負師の雰囲気がありました」

 彼らの将棋は、弦巻氏の目にはどう映るのか。「あの世代が最後だと思います。屋根の上から飛び降りるような思いきった一手を指すのはね。コンピュータ全盛で、今の若い子たちの将棋は誰が指しても同じように見えます。コンピュータだったら0点と判定されても、勝利につながる一手を指す。それが見たくて、僕は将棋を撮っているんですけどね」

 将棋界を揺るがす三浦弘行九段のカンニング問題には、こう語る。「性善説に基づいて将棋連盟はやってきた。これまでなら“まず三浦をどう救うか”を考えたでしょう。根本の愛情が将棋には通じる。効率ばかりを求め、数字でポイントを競うようになったら連盟なんてなくていいでしょう。ピストルに竹やりで立ち向かう、将棋界はそういう場所だったんですから」

 破天荒でありながら、周囲に愛された村山聖九段の姿を、改めて見つめる時期なのかもしれない。

写真/弦巻勝

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