この一件をきっかけに、ASKAはX氏に気を許し、関係を深めていく。

「だから、ASKAの自宅には自由に出入りできた。いつも使っていた勝手口から入ってすぐの所にある音楽室で会っていた。俺がASKAの自宅近くの駅まで電車で行くと、ASKAがほぼ毎回迎えに来てくれるんだよ。ワインカラーのジャガーをASKA自身が運転してね。駅から自宅までは5分くらいで着いた。ASKAは車の中では、洋楽しか聞かなかった。日本のアーティストはほとんど聞いていなかった。TUBEの前田(亘輝)さんとは仲が良かったようだけど」

 そして、X氏はASKAのさまざまな一面を知るようになる。

「ASKAと2人でクスリを使用したことがあるよ。そのときまで、クスリをやっているなんて知らなかったけど、その姿を見てビックリしたよ。そのやり方というか、スタイルというか、あれは完全に“(クスリの)プロ”だね。本人も“注射器はやらない”と言っていたけど、やっぱり芸能人だから、腕を出す機会も多いし、炙りでしかやらない。俺はそれまで炙りでやったことがなかったけど、彼が全部やってくれて初めて炙りをやったんだから」

 14年8月、ASKAは初公判で「興味もあったのですが、病院の(睡眠)薬が効かなくなったので」と薬物使用の理由を語っていたが、その範疇を超えて相当、回数を重ねていたように感じられたという。

「普通はクスリをやると表情が変わるんだけど、ASKAの場合は、やる前とやった後で一切変化がなかった。逆に言えば、それだけ慣れているという証拠。ステージで疲れていたり、睡眠不足が続いていれば変わるんだけどね。そういえば、駅前にジャガーで迎えに来てくれたとき、彼が変装もせずにギラギラした目で俺を待っているときがあったのは印象に残っている」

『週刊文春』がいち早くASKAの薬物情報を入手して本人に直撃した際、ASKAは<僕が使っていたのはアンナカです。『安息香酸ナトリウムカフェイン』といって通称アンナカといわれる薬なんですけど、(中略)アンナカを一包飲むと、二~三時間は目が覚める><六本木のある病院で(アンナカを)処方してもらっていた>(『週刊文春』13年8月8日号)と語っていた。関係者の間からは“見え透いた嘘”との観測も流れたが、そうではないという。

「ASKAからアンナカを渡されたことがあるんだよ。馬の興奮剤だとか話は聞いたことがあるけど、そのとき初めて見た。通常の飲み薬で使われる半透明の紙袋が3つ続きで入っていて、そこにはご丁寧に、“○○○のアンナカ”とボールペンで製薬会社の名前が書かれていて、ビックリしたよ」

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