「そうした数々のポカにもかかわらず支持率は、その都度また上向き、日露首脳会談の前には5割以上という高い支持率にまで回復しています。今は5割をわずかに切っていますが、喉元過ぎれば何とやらで、また上がるでしょうね」(前出)

 そう、安倍政権をここまで磐石にしてきたのは、この驚異の“回復力”なのだ。「支持率が40%以上あると、メディアも露骨に攻撃できませんからね。ここに圧倒的な“数”の力が加われば、もう無敵です」(政治評論家の浅川博忠氏)

 それにしても、これほど問題山積のわりに高支持率を維持しているその秘密は、何なのだろうか。「いくつか考えられますが、最大の要因は、野党が不甲斐ないことでしょうね」(政治評論家の有馬晴海氏) 最大野党である民進党が、有効な政策を何も打ち出せないどころか、内部対立などもあって、まったく政党の体をなしていない体たらく。“独り勝ち”の最大要因は、これだろう。

「それから、重要なのは菅義偉官房長官の存在。彼はあくまで総理の女房役に徹し、その座を狙うような姿勢は微塵も見せません。それどころか、米軍のオスプレイが沖縄県名護市で起こした墜落事故の件でも、記者会見で総理ではなく自分にバッシングが向けられるように仕向ける“策士”でもあります」(政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏)

 これほど献身的な片腕がいるからこそ、盤石の政権運営が可能なのだ。また、第一次政権の失敗を教訓にしていることも強みの一つだという。「当時のスローガンは“美しい日本を取り戻す”という抽象的なものでした。だから、世間はピンと来なかったんでしょう。国民にとって、何より大事なのは生活。そのために再登板後、首相は経済政策に力を入れたんです」(前出の浅川氏)

 再登板後に掲げた「アベノミクス」こそが、その中核。政府主導の金融緩和で株価を押し上げ、円安の状況を作り出す。これで輸出に頼る製造業などの収益を好転させるのが狙いだった。事実、安倍首相の再登板後、見事に円安株高となり、日経平均株価は一時、2万円を超える14年ぶりの高水準にまで回復。その後、いったん円高の機運が高まったが、現在は再び円安基調に。「このまま安倍政権が続くなら、日経平均3万円も見えてきます」と、ある証券会社幹部は言う。

「円高に振れて“アベノミクスも終わりか”と思ったら、アメリカ大統領選でトランプ氏が勝ち、その余波で急激に円安に戻って株価も回復。強運も含めて、久しぶりにイケイケ感のある、“持ってる”総理ですね。民主党時代になんだか陰気な首相が続き、実際に景気も悪かったことの反動もあって“安倍さんなら”と支持されている部分があるでしょうね」(前同)

 領土交渉が手こずろうが、閣僚が不祥事を起こそうが、庶民は“生活がよくなるのなら”と安倍政権を支持する――その確信が、安倍首相の強気な政権運営にもつながっているわけだ。

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