そもそも、この“金正恩暗殺計画”は、今に始まった話ではない。『コリア・レポート』編集長の辺真一氏が言う。

「実は韓国は2010年、北朝鮮との有事に備え、交戦規定を改めています。“敵(北朝鮮)の気配を感じたら、上に伺うことなく攻撃せよ。また敵が攻撃して来たら10倍にして返せ”と、事後報告で構わないという方針に転換したんです。さらに昨年、朴槿恵大統領は韓国と米国の『作戦計画5015』にOKのサインをしています。この作戦には“金正恩の除去”、つまり暗殺も含まれています」

 従来の合同演習では、『作戦計画5027』すなわち、北朝鮮の南進に対抗する訓練が展開されていたが、それが大幅に強化された形だ。その背景には、北朝鮮の核ミサイル開発の急激な進展がある。「昨年3月、米軍トップのジョセフ・ダンフォード総合参謀本部議長は下院軍事委員会で、“北朝鮮と開戦になれば主導権を奪われる可能性がある。北朝鮮の軍事力は世界第4位”と述べています」(前同)

 そうした、北朝鮮への警戒は強まる一方。「特に、トランプ大統領の側近は外交・軍事面に関して、タカ派、軍部出身者が多い。参謀らは、北朝鮮の核開発・弾道ミサイル計画を、年内に止めさせないと危険だと進言しています。アメリカ本土にまで届くミサイルを北朝鮮が開発してしまったら、アルカイダによる9・11の航空機テロのようなことが起きるかもしれないと考えているためです」(前出の高永喆氏)

 日米首脳会談が行われていた2月12日に、北朝鮮は新型中長距離弾道ミサイル『北極星2型』の発射実験に成功。「『北極星2型』には、燃料注入作業を要する液体燃料ではなく、移動や発射を迅速に行える固体燃料が使用されています。こうなると、米韓は事前に打ち上げを探知することが困難で、迎撃に時間がかかります。韓国で年内配備予定のTHAADでも、迎撃に限界があるとの見方もあります」(前出の国際部記者)

 北朝鮮が、ことさらに軍事力の増強を急ぐ理由は、「金正恩には、見下された外交はしたくないとの思いがあるんです。就任以降、一度も中国との首脳会談に臨まないのも、まず国威を高め、対等の状況を作れるカードを持ってから、すなわち、核ミサイルのレベルを大国並みにレベルアップしてから動こうという考えによるものです。中国側の各種制裁措置への正式なコメントは控えていますが、金正恩および周辺からは不満タラタラの声が漏れ伝わっています」(前出の井野氏)

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