高砂親方
高砂親方

 現役時代は北の湖らと名勝負を繰り広げ、引退後は朝青龍らを育てた名物親方が本誌に登場。愛あふれる“辛口解説”を聞け!(取材・文:武田葉月/ノンフィクションライター)

 近畿大学から鳴り物入りで高砂部屋に入門し、現役時代は183キロの巨体から繰り出される豪快な押し相撲で人気を集めた大関・朝潮。“大ちゃん”の愛称で親しまれ、引退後は若松部屋、高砂部屋の師匠として横綱・朝青龍らを育てたことでも知られている。長く相撲協会の広報部長を務めた高砂親方に、その鋭い視点で、13日にスタートした夏場所の見どころや注目力士、優勝争いについて語ってもらった。

■遠藤や逸ノ城ら、人気者が注目を集める

――この夏場所は、現在の大相撲ブームのキッカケを作った人気者・遠藤(27)が新小結に昇進。さらにモンスター・逸ノ城(25)も関脇に復帰して、注目を集めていますよね?

高砂(以下=高) 遅いよ! 遠藤は(笑)。私にしてみれば、「今頃、三役に上がって、どうするんだ、バカヤロー!」ってところですね(笑)。遠藤が入門して、わずか3場所でパーッと幕内に上がって活躍したのって、5年くらい前の話でしょう。ケガの影響とか番付運が悪いとか、いろいろ言い訳はあるんだろうけど、力がないから、こんなに(昇進するのが)遅いんです。まあ、時間はかかったけれど、力をつけて三役に上がったんだから、この新三役を足がかりに、三役に定着していけばいい。稽古はよくしているみたいだしね。

 そして逸ノ城。彼も遠藤と一緒の時期にブレイクしたけど、その後は鳴かず飛ばず。200キロ超えの体重やダイエットの話題ばかりだったけれど(笑)、ここにきてスランプを乗り越え、今、ようやく、ひと皮むけたところじゃない? 225キロの巨体を生かした相撲が彼の魅力だから、どんどん攻めていけば、面白い存在になると思うよ。

――初場所で平幕優勝した栃ノ心(30)は、春場所で二ケタ、10勝。今場所は「大関獲り」の場所ですね。
高 (八角)理事長も「そういう場所になるだろう」とコメントしているみたいだしね。確かに、初場所の優勝はすごかったけれど、先場所の10番は「やっと勝った」って感じだから、私からすると価値ないなぁ。それで今場所は、取ってつけたような大関獲りで、まるで「大関に上がってください」みたいなムードなのも、いかがなものか……。あ、でも今場所、横綱、大関を2~3人倒して、12番くらい勝ったら、話は別ですよ。だけど、それは難しいでしょう。だから今場所、10番か11番勝って、次の場所につなげるくらいの気持ちで臨めば、逆に大関の座が転がり込んでくるかもしれないね。

■横綱・白鵬や鶴竜は?

――なるほど。3横綱ですが、稀勢の里(31)が7場所連続休場するなど、進退去就が取り沙汰されています。

高 そうね。かつては無敵だった白鵬(33)も、このところ衰えが見えてきているしね。若い頃の稽古の貯金が切れてきて、ケガをしやすくなっているし、治りも遅い。これまで彼は、ケガからのリカバリーが抜群にうまかったんですよ。でも最近、それができなくなってきている。つまり、無理をしないと勝てなくなっているんです。そういう意味で、鶴竜(32)の仕上がり具合は順調に見えるね。ケガで休場が続いていたけど、じっくり治して、稽古の仕方も工夫している。先場所の(7場所ぶりの)優勝が彼の自信になっているし、その勢いのまま、夏場所に入った感じがします。

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