朗読詩人 成宮アイコ エッセイ
「愛せない日常と夜中のイヤホンで流れるアイドル」
朗読詩人の彼女が、大好きなアイドルのことと、なかなか好きになれない自分と生活のことを綴る連載。第2回は、池袋のサンシャインシティ噴水前広場でおこった出来事についてです。
第2回アイドルオタクとひきこもりと服飾学生が一緒に泣いた日
2019年初現場は1月1日。新潟を拠点に活動するRYUTistの元旦ライブでした。お正月から好きなアイドルの歌が聴けて、最高の1年になる予感しかなかったです。
けれど、SNSでは「元旦からアイドル見に行くやつwww」的なコピペが目に入りました。アイドルを応援していると、幸せの基準をぶつけられることがあります。
●ふと、耳に入ってしまった「アイドルオタクやば……」
池袋のサンシャインシティ噴水前広場ではたびたびアイドルのフリーライブが開催され、吹き抜けになった1階から3階までたくさんの人が集まります。もちろん、わたしもなんども訪れていて、田中れいなちゃんを初めて見たのも、さんみゅ〜を好きになっていちばん最初に見たライブも噴水前広場でした。
普通に買い物をしていたら、コールが聞こえてきて(遠くにいると歌声よりも、ファンのコールのほうが聞こえてくるんですよね)、「アイドルがいる!」と、いそいでかけつけたら、kolme(当時はcallme)が見られたというラッキーな日もありました。
そういったショッピングモール内でのイベントは気軽に見られる反面、不意打ちに心ない言葉をなげかけられて、驚くことがあります。
その日は、好きなアイドルの中でもわりと大きな規模で活動をしているいわば中堅アイドルグループでした。色とりどりのメンバーカラーのTシャツやキンブレで、噴水前は一変ド派手な会場のようになっていました。
お目当てのグループの出番までまだだいぶ時間があったので、わたしは目の前のサンリオショップで、レジ脇に置かれている月刊誌「いちご新聞」を買うかやめるか迷っていました。でもこれを買ったらライブを見るときに邪魔なんだよな、と悩んでいたら、レジに女の子が並びました。
「これ、プレゼント用にしてください」
全身真っ白コーデに茶髪ゆる巻き、めっちゃかわいい子だな……と思ってつい横目でチラっと見てしまいます。マイメロのカバンにこれから出演するアイドルの缶バッジがついていました。わたしもリュックに同じグループの缶バッジをつけていたので、なんだかちょっと照れてしまって、お店を出ました。
その子がつけていた缶バッジのメンバーは、サンリオのキャラクターが好きな子です。そういえばつい先日も、「サンリオのキャラクター大賞に投票しました」というブログを書いていたっけ……。もしかしたら、あのプレゼントは今日の特典会でメンバーに渡すものかもしれません。
勢いでお店を出てしまったものの、まだ時間があったので、同じフロアのカフェに入ります。通路を一本挟めば、カラフルなTシャツも見えないし、店内にも女の子だけしかいない。いつも通りのファッションビルです。
ワッフルとコーヒーを頼んで、事前予習をしておこうとツイッターを開いてグループのSNSを見返していたら、低くて大きな歓声が聞こえてきました。きっと、最初のグループが登場したのでしょう。
やっぱり歌声は聞こえないんだよな、と笑いをかみころし、ソワソワとした気持ちでワッフルを待っていたら、隣のテーブルの人たちが発した言葉でわたしの空気は止まりました。
「アイドルオタクやば……」