長谷川博己
長谷川博己

 安藤サクラ(33)が主役の福子を演じる連続テレビ小説まんぷく』(NHK)が、いよいよ最終回を迎える。半年間ずっと高視聴率をキープし続け、NHKの木田幸紀放送総局長は「朝から元気の出る朝ドラだった。いいドラマだったなあと思います」と作品を評価。確かに「元気が出る」という点では、朝ドラ史に残る傑作だった。

 中でも萬平役を見事に演じきった長谷川博己(42)の存在が大きかったと思う。ここでは3月23日の放送回を振り返り、萬平を演じた長谷川の活躍について考えてみよう。

 夜中に見た夢で、まんぷくヌードルの麺を固定する方法を思いついた萬平。その後、無事にまんぷくヌードルのデザインも完成する。世良(桐谷健太/39)に100円で売ることを反対されるが、核家族化の時代になると日本の食のあり方も変わると、萬平は熱弁。価格を変えないまま、ついにまんぷくヌードルが発売されることとなった。

 この放送回は萬平の特徴がよく出ていた。夢をヒントに夜中に飛び起きる奇人っぷり。誰に何を言われようとまんぷくヌードルの価格を変えない頑固さ。そして日本の食文化の未来を見据える、理知的な一面。半年にわたって『まんぷく』で見せてきた、“萬平さんらしさ”が詰まっていた。とくに夢を見るシーンは大反響で、「萬平さんの顔芸がたくさん見られて幸せです」などツイッターにもコメントが相次いだ。

 しかし注目すべきは顔芸だけではない。『まんぷく』は俳優、長谷川博己の可能性を広げる作品となったのではないだろうか。福子と漫才をしたり、ダネイホンの広告では派手なスーツを着るはめになったり、鈴(松坂慶子/66)とはいつまでもチグハグなやりとりをしたりと、萬平はたくさんの笑いを提供してくれた。シリアスな場面が多かった本作だが、振り返ると萬平が笑わせてくれた思い出ばかりだ。まじめで職人気質なのに天然で憎めない男、というギャップも最高だった。

 もちろん、これは演じていた長谷川博己の演技力のなせる業だ。『まんぷく』ではいい意味で、これまでの“長谷川博己像”を崩すことができたように思う。2011年のドラマ『家政婦のミタ』(日本テレビ系)で見せた優柔不断な父親役、2014年『MOZU』(TBS/WOWOW)でのぶっ飛んだ犯罪者役と、長谷川は個性的な役柄をこなしてきた。

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