乃木坂46「個人PVという実験場」
第7回 乃木坂46を象徴する人物だった白石麻衣の個人PV史 1/4
■乃木坂46と社会を繋ぐ象徴的な人物だった
乃木坂46の最新25枚目シングル『しあわせの保護色』は、表題曲センターを務める白石麻衣にとってグループ在籍中のラストシングルとなった。もっとも、新型コロナウィルスの感染拡大によって各種活動の中止・延期が続く今般の状況を受け、彼女がグループから卒業するタイミングもしばらくは保留にされている。
卒業延期が発表された際に明かされたのは、本来ならば白石がグループから離れる区切りとして5月5~7日の三日間に東京ドームライブが企画されていたということだった。卒業に際して用意されたその舞台の大きさは、彼女がグループの顔として担ってきた役割がいかに重いものだったかを物語る。
楽曲パフォーマンス等の表現において重要な位置にあったことはもちろん、白石麻衣は乃木坂46のパブリックイメージを形成し、グループが「世間」に対峙するうえでの代表者としての立場を長い間担ってきた。一人の芸能者あるいはファッションアイコンとして巨大な有名性を背負い、白石は乃木坂46と社会とを繋ぐ象徴的な人物であり続けた。
その白石出演の個人PVを概観するとき、彼女の有名アイコンとしての立場を前提にした作品がしばしば制作されていることに気づく。もっとも、有名な芸能人・アイドルとして扱われることは、必ずしも晴れがましくポジティブであるわけではない。
ときに他者をジャッジするための比較項として乱暴に呼び出され、ときに晴れやかなイメージは外面だけのものであるはずだという身勝手な烙印を押される。有名性とは、憧憬の対象であると同時に、不特定多数の人々からぞんざいに扱われるということでもある。