乃木坂46堀未央奈個人PV「ほりのこもり」のドラマ作品とは異なるアプローチとは?【乃木坂46「個人PVという実験場」第12回3/4】の画像
※画像は乃木坂46『インフルエンサー(通常盤)』より

乃木坂46「個人PVという実験場」

第12回 今泉力哉作品が描く他者との関係性の築き方 3/4

■今泉力哉監督の映画に見られる「子どもとの交わり」

 今泉力哉が監督を務めた2020年公開の映画『mellow』では、花屋を営む誠一(田中圭)をとりまく人々の、成就しない恋愛模様の交錯が描かれる。もっとも、主人公の誠一自身は他者に対して積極的にアプローチをかけるような、熱量の高い恋慕の感情を持っているわけではない。

 むしろ、彼の周囲に点在する人々にこそ、実らない恋の葛藤が強くあらわれる。いくつもの思いが行き交うその中心に飄々と、かつ柔らかく立ち続ける主人公を、田中圭が得難い存在感で演じている。

 いくつもの片思いが行き交うこの物語のなかで、やや手ざわりの異なる人間関係を表現しているのが、誠一と小学生の姪・さほ(白鳥玉季)とのふれあいである。転校後、登校が苦手になってしまった姪を誠一は時折預かり、店でともに時間を過ごしたり近所に連れ出したりして面倒を見ている。厄介な恋愛関係にとりまかれる今泉作品のなかで、親子関係とも異なる大人と子どもの親しげなやりとりが温かな空気をもたらす。

 あるいは、深川麻衣が乃木坂46卒業後に主演した『パンとバスと2度目のハツコイ』(2018年)では、主人公のふみ(深川)がかつて自分のことを好きだった同級生・さとみ(伊藤沙莉)と再会し、彼女の息子を子守りするシーンがある。

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