通算219勝。50歳まで現役を続けた“鉄腕”山本昌さんが、野球殿堂入りという、大きな勲章を手にしました。
昌さんと初めてお会いしたのは、小料理屋さんだったと思います。あっという間に意気投合して、そのままカラオケへ。以来、京都や名古屋で食事をしながら、トレーニングやケアについて、いろいろと教えていただきました。
「一番大事なのは、動きの中心となる骨盤だから」
熱っぽく話す昌さんは、尊敬すべきアスリートです。もっとも、昌さんが聞いてくるのは、いつも競馬のことでしたけど(笑)。
――お互いが引退したときに記念の品を贈ろう。いつかは覚えていませんが、そんな約束を交わしました。家には、昌さんが、現役最後の試合で使ったグラブが飾ってあります。昌さん、本当におめでとうございます!
言葉に添えて、勝利の二文字を届けたい――。気持ちを新たに臨んだのが、1月15日に催された牝馬限定のハンデG3第59回愛知杯です。パートナーのルビーカサブランカは、このレースを迎えるまで19戦4勝。重賞に挑戦するのは、これが初めてとあって、ハンデ52キロ。当日の人気は7番人気でした。
――できれば、インに潜り込みたい。レース展開、位置取りは、狙い通り。1枠1番からポンと出たルビーカサブランカは、前半、中団のインで気持ちよさそうに走っていました。
スパートしたのは、直線を向いてすぐです。ぽっかり空いた内のスペースから、いい手応えのまま、一気に先頭へ。最後は、我慢、我慢、また、我慢……。
頼む。もうちょっと。もうちょっとだけ、我慢してくれ――。
そんな僕の思いが届いたのか、ギリギリ、アタマ差しのいで、ゴール板に飛び込んでくれました。
この勝利で僕は、デビューから36 年連続の重賞Ⅴ。昌さんと同じく、“鉄人”と呼んでいただけるようになるまで、記録を伸ばしたいと思います。
さぁ、それでは、今週の騎乗馬です。週末は東京競馬の開幕週に参戦。29日は、メインの白富士Sでディープモンスターとコンビを組みます。菊花賞5着以来の競馬となるディープモンスターが、どんな走りを見せてくれるのか。誰よりも僕が一番、ワクワクしています。
30日のセントポーリア賞でコンビを組むのは、デルマグレムリン。メインのG3根岸Sは、東京ダート1400メートルのグリーンチャンネルC、オープンの霜月Sを連勝中のヘリオスです。
今週も、最後まで全力騎乗で、最高の勝利を目指します。
「武豊 人生に役立つ勝負師の作法」最新記事