昨年12月の香港スプリントで、他馬の落馬に巻き込まれ、左鎖骨を骨折。戦列を離れていたユーイチ(福永祐一騎手)が、元気な姿で帰ってきました。
放り投げられるように落ち、地面に叩きつけられたのを見た瞬間は、自分の落馬事故の映像と重なり、血の気が引く思いでしたが、元気に復帰できたことは、競馬界にとって、うれしいニュースです。
――お帰り、ユーイチ! そのユーイチが、復帰後初勝利を挙げたのは、5日中京のメインレース、アルデバランSでした。
1着 スマッシングハーツ 騎手 福永祐一
2着 ニューモニュメント 騎手 武豊
勝てなかった悔しさは当然ありますが、ユーイチが休んでいる間、どんな気持ちで毎日を過ごし、どんな気持ちで競馬中継を見ていたのか。それが痛いほど分かるので、うれしそうなユーイチを見ている僕の頬も、緩んでいたような気がします。
翌6日の中京は、積雪の影響で1時間遅れのスタート。降雪の状況によっては、中止の可能性もありましたが、小雪が舞う中、作業員の方々が総出で芝コースの雪かきをしてくれたおかげで、無事開催することができました。関係者の方には、感謝しかありません。
僕自身は7鞍に騎乗して、10R瀬戸ステークス(パートナーは、ハヤブサナンデクン)の1勝と、満足できる結果を挙げることはできませんでした。
しかし、みんなが全力を出し切る騎乗で、関係者の方の努力に応えられたのではないかと思っています。
怪我ニモ負ケズ、雪ニモ負ケズ、コロナ禍ニモ負ケズ――今週も、ジョッキー全員が一丸となって全力騎乗で挑みます。
今週末、19、20日の2日間で行われる重賞競走は、東京、阪神、小倉の3場で4つ。19日は、東京でG3ダイヤモンドS、阪神でG3京都牝馬S。20日は、小倉でG3小倉大賞典、東京で、今年一つめのG1フェブラリーSの予定です。
これまで、ダイヤモンドSは1勝。京都牝馬Sと小倉大賞典が3勝、フェブラリーSで5勝と、思い出すと、パートナーの走りが頭に浮かんできます。
その中で、今回、皆さんにお伝えしたいのは小倉競馬場の改修に伴い、中京で行われた1998年の小倉大賞典のウイナーホース、サイレンススズカです。
圧倒的なスピードで大差勝ちを収めた「伝説の金鯱賞」の一つ前、“衝撃の前夜祭”と呼んでもいいレースでした。
「僕に乗せてください」と橋田先生にお願いして実現した香港国際C(5着)から4戦目。バレンタインS、G2中山記念を連勝して臨んだこのレースで、「どんな馬が出てきても負けない」という確かな手応えを感じていました。
競馬に“もしも”はありませんが、彼と凱旋門賞に行けていたら……。あの走りを思い出すと、つい、そんな夢を見てしまいます。
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