関西に生息するアヤシくてオモロい人たちに、大阪出身・京都在住の人気ライター・吉村智樹が直撃インタビュー!
■懐かしの車を眺めつつ一服――昭和のあの頃が心に蘇るカフェ
予備知識なくこのカフェに入って、驚かない人はいないだろう。扉を開けると、店内にはなんと! 昭和生まれの名車がドーンと置かれているではないか。一瞬「誤ってガレージに入ってしまったのか」と勘違いし、引き返してしまいそう。
「心配そうな表情で、“ここで本当にコーヒーが飲めるんですか?”と尋ねてくるお客様もいます」
そう語るのは、大阪の長堀橋に昨年オープンした国産旧車カフェ『福田屋珈琲店360(サンロクマル)』のオーナー、福田祥憲さん(54)。
店内に展示されている昭和43年式の「スバル360」は単なるインテリアではない。実は彼の自家用車だ。レストアして車検を通し、ナンバープレートを取得。もちろん公道での走行は可能。
「旧車は運転しないとすぐ動かなくなるから」と実際に通勤に使う現役なのだ。店名にあ「サンロクマル」は昭和51年まで軽自動車の排気量上限規格だった「360cc」を表している。
旧車は他に昭和44年式のマツダ「キャロル360」があり、不定期で展示を入れ替える。店内の旧車を交換するために外構が全開するように設計されているのがスゴイ。つまり、店内に旧車を置くことが前提で造られたカフェなのだ。
「お客様でしたら、写真撮影OK。実際に触れたり、運転席に乗ったりしていただいてもかまいません。ハンドルを握りながら、“小さな車なのに、車内は意外と広いんだね”と驚く人も多いです」
●会社を早期退職し旧車カフェを開業!
かつてはサラリーマンだった彼は、学生時代からアンティークが大好き。趣味が高じて、旧車にも関心を抱いたものの、「修理費と維持費が大変で」当時は購入できなかった。
そうして、50歳を機に早期退職。退職金などを利用し、恋焦がれていた旧車をついに入手。さらに店内にいながら、人懐っこいフォルムを愛でつつ、コーヒーを楽しめるカフェを開いたのだ。
「50〜60代くらいのお客様は“父親の愛車だったよ”などと語りながら懐かしんでおられます。反対に若い女性は“なにこれ! こんなかわいい車があったの?”と新鮮に感じるようで、皆さん、スマホで撮影してインスタグラムにアップしておられます」
かつて「てんとう虫」と呼ばれた日本の名車は、時代を超えて今なお幅広い世代の人々を楽しませているようだ。
今後は3台目の旧車、昭和37年式のダットサン「ブルーバード」が仲間に加わる予定。
「淡路島産たまねぎのカレーホットサンド」(550円)など、おいしいフードメニューも豊富。
いまいち元気がない令和の時代、名車を眺めながら、皆がマイカーに憧れた昭和の高度成長期へ、しばし空想ドライブしてみてはいかがだろう。