頚椎の椎間板ヘルニアで戦列を離れているヨシトミ先輩(柴田善臣騎手)が、令和4年春の褒章で、黄綬褒章を受章されました。ジョッキーとしては、地方競馬の的場文男騎手に続いて2人目。JRA所属の現役ジョッキーでは、初めてとなります。
皆さんご存じのように、ヨシトミ先輩は、1982年に開校したJRA競馬学校の第1期生。同期には、僕が兄と慕う石橋守調教師、須貝尚介調教師など、錚々たる先輩たちが顔をそろえていますが、ヨシトミ先輩はただひとり、現役を続けている尊敬すべき先輩です。
怖い先輩だったかって? そうですね(苦笑)。僕が3期生として入学したとき、ヨシトミ先輩たちは最上級生ですから、ものすごく大人に見えて。怖いというより、ただただ、見上げるような存在でした。
ちなみに、2期生には、今も現役で頑張っているノリちゃん(横山典弘騎手)、熊沢先輩(熊沢重文騎手)や松永幹夫調教師たちがいます。同じ時代をともに戦ってきた人間のひとりとして、今回のヨシトミ先輩の受章は、僕にとってもすごく励みにもなるし、うれしいニュースです。
怪我からの復帰時期はまだ決まっていないようですが、また一緒のレースで腕を競える日が来るのを楽しみに待っています。ヨシトミ先輩が持っている55歳0か月10日という、JRAの最年長記録もそうですが、いつまでも高い壁でいてください。
今週末は、東京競馬場を舞台に、5週連続で行われるG1戦線のど真ん中、牝馬三冠の第2弾、オークスが待っています。
一発を狙った第1弾のNHKマイルCは、パートナーのジャングロが、興奮のあまりスタート前にゲートに突進。「うおっ」と思ったときには、ライバルたちが3馬身、4馬身先を走っていました。
こうなると、もう腹を括るしかありません。道中は、最後方を追走。末脚にすべてを賭ける競馬に方向転換です。結果は、メンバー2位の上がりタイムで追い上げ7着。これまで経験したことのない競馬でしたが、道中は折り合いよく運べたし、今後に向けて、手応えを感じられる内容の競馬になりました。
ただ、内容より結果を問われるのがG1です。阪神JF3着、桜花賞2着のウォーターナビレラにとっても、このオークスが正念場になることは間違いありません。
今までで最高の状態で出走できた桜花賞は、返し馬、ゲート、ペース、位置取りと、すべてが最高で、「悔いのないレースでした」と胸を張ることはできますが……2着はやっぱり2着です。
東京コース2400メートルの距離は? 初めての左回りは? 不安要素がないわけではありません。でも、ここまでくれば、あとは、やるだけ。弟・武幸四郎調教師とのタッグで、頂点を目指します。
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