関西に生息するアヤシくてオモロい人たちに、大阪出身・京都在住の人気ライター・吉村智樹が直撃インタビュー!
■見よう見まねで始めた切り絵が大ウケして人気切り絵作家に!
ルポライターの第一人者で、『土葬の村』『葬祭の日本史』など話題の本を続々とリリースしている高橋繁行さん(68)が、またもや強烈な一冊を上梓した。しかも、その本はルポルタージュではなく、意外にも「絵本」なのだ。
新刊『いぶきどうじ~オニたんじょう』(みらいパブリッシング)は、八つの頭を持つ怪獣ヤマタノオロチの息子が、鬼の頭領である酒呑童子へと成長していく壮大なドラマを描いた児童書。文章はもちろん、絵もすべて自らが手がけた。
「人気の『鬼滅の刃』にも、最強の敵として鬼が登場します。時代が変わっても、子どもたちは鬼に興味がある。だったら、鬼を主人公にした絵本を描いてみようと考えたんです」
鬼の世界を追求した、この絵本。何より驚かされるのは、全編にわたり高橋さん自身の「切り絵」で展開されるところ。どのページも“鬼気”迫る画風なのだ。
「還暦になってから切り絵を始め、これまで約2400枚の絵を完成させました。一日1点、死ぬまでに1万点を完成させるのが目標です」
■切り絵作家として1億円稼ぎたい!
文章の世界にいる高橋さんが畑違いの切り絵と出合ったきっかけは、友人たちと開催している「大人の学芸会」。なじみの居酒屋で半年に1回、芝居を上演していた。彼は脚本のみならず舞台装置の製作も担った。
「居酒屋の店内ですから大掛かりなセットは建てられないので、素材は紙にしました。とはいえ、紙に筆でちまちま絵の具を塗っていたのでは時間がかかる。その点、切り絵はサーッと切ってしまえば絵ができあがるので完成が早い。そうして100円ショップでカッターナイフを購入し、見よう見まねで切り絵をやってみたところ、評判がよくてね」
彼は後にフィンランド美術賞展で作品が入選したり、100点以上の新作を展示する個展を3度も開いたりするなど、切り絵作家として第二の人生を歩んでいる。
時間短縮を理由に始めた切り絵で、眠っていた才能が開花したのだから、何が功を奏するか分からない。
「もともと絵を描くのが好きで、老後の楽しみにしようと考えていました。ところが切り絵と出合ってから、すっかり老後の仕事になった。不思議ですね。現在は“切り絵で1億円を稼いでやる”という気持ちでいます」
文章のみならず、美術の世界でも名を馳せた“鬼才”高橋さん。ナイフで、自ら人生の新たな道を切り拓いたのである。
「切り絵は線がシャープで、下地を変えれば、さまざまな色に変化するのが魅力ですね。コロナが落ち着いたら、切り絵教室を始めようと計画中です」
あなたも切り絵に挑戦してみてはいかがだろう。その際、ケガにだけは気をつけてもらいたい。
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