海外から、二つの大きなニュースが飛び込んできました。
一つめは、イギリスのアスコット競馬場で行われたマイルのG1クイーンアンステークスです。
これまで、このレースに日本馬が挑戦したのは、2016年のエイシンエルヴィン1頭(10着)だけと、やや、なじみの薄いレース。しかし、ロイヤルアスコットの開幕を告げる大事なレースで、“史上最強馬”とも称される、あのフランケルが、11馬身差で勝った伝統あるG1です。
このレースで、本命に推されたのは、ここまでデビュー7連勝で、マイルG1を3連勝中のバーイード。そのうちの一つ、ムーランドロンシャン賞は、スキーパラダイスをパートナーに、僕が初めて海外競馬で手にした勲章です。
大観衆の中でも、物怖じしないバーイードは、道中2番手をキープ。ここから、どんな競馬を見せてくれるのかとワクワクしていたら、残り600メートルを切ったところで持ったまま先頭へ。懸命に追いすがるライバルたちを軽く突き放すと、余裕の走りで、そのままゴールに飛び込んで行きました。
テレビ中継で解説を務めていた日本でもおなじみのオイシン・マーフィー騎手が、「まるで調教のようだった」と話していたように、その強さは本物中の本物。見ていて、ゾワリと鳥肌が立つほどのすごみでした。
こういう馬を見ると、「世界は広い」ということを実感させられます。
二つめは、昨年の凱旋門賞で僕が騎乗させていただいた、クールモアと松島正昭オーナーが共同で所有しているブルームの話題です。
バーイードの衝撃的な走りで幕を開けたロイヤルアスコットの最終日に開催されたG2ハードウィックSに参戦。ライアン・ムーアとのコンビで、鮮やかな逃げ切り勝ちを収め、復活のノロシを上げました。
このまま順調に進めば、今年は、ライバルとして僕の前に立ちはだかる可能性もあります。
今年の凱旋門賞に登録した日本馬は7頭。昨年のダービー馬、シャフリヤール。天皇賞(春)を制したタイトルホルダー、2年連続の挑戦を表明したディープボンド。矢作芳人厩舎の3頭、ステイフーリッシュ、パンサラッサ、ユニコーンライオン。そして、友道康夫先生、松島オーナーと僕がチームを組む、今年のダービー馬のドウデュースです。
ライバルは、今年のイギリス、ダービーを制したデザートクラウン。3歳牝馬のエミリーアップジョン。イギリス、アイルランドのG1を連覇したザフーガなど、有力馬たちが続々と名乗りを上げています。
ディープインパクトでも、オルフェーヴルでも勝てなかった凱旋門賞を、どう乗ったら勝てるのか?
53歳になって、それでも夢に向かって走り続けられる幸せを感じながら、10月2日に照準を合わせ、今からドキドキを楽しみたいと思っています。
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