多くの日本人が、2年以上にわたって自粛してきた海水浴。今年の夏こそは、と思っている読者も多いことだろうが、少し気になるニュースが聞こえてくる。
ここ数年、日本各地の海岸で、サメの目撃事例が増えているというのだ。
「昨年6月には、新潟県柏崎市の海水浴場で背ビレが40センチもある大型のサメが目撃されて大騒ぎに。三角形の背ビレを突き出して泳ぐ姿は、スピルバーグ監督の傑作『JAWS』を思わせました。背ビレの形からメジロザメの一種で、体長3メートル、体重200キロ級の大物だったそうです」(全国紙社会部記者)
今年6月17日には沖縄県那覇市中央部の干潟で、“人食いザメ”の一種、オオメジロザメ4匹が死体で発見された。河口近くで大型のサメが4匹も見つかるのは、非常に珍しいという。
近年、サメの目撃例が増えた原因の一つとして考えられているのが、「黒潮の大蛇行」と呼ばれる現象だ。
「もともと日本近海にはサメが多いんですが、ここ数年、太平洋沿岸を流れる黒潮が南に大きく蛇行し、紀伊半島沖をいったん離れてから、東海地方に接近する現象が見られます。このため、温かい海を好む外洋性のサメがエサの魚を追いかけて太平洋沿岸の海水浴場などに近づくケースが増えているようです」
こう解説するのは、東海大海洋学部の堀江琢准教授。
「沖縄で目撃されたオオメジロザメは淡水でも生きられるので、河口にいてもおかしくない。サメは臆病な生物で人間に危害を加えることはめったにありませんが、もし遭遇しても、いたずらに騒ぎ立てて刺激しないことが重要です」(前同)
一口にサメといっても約500種類いるそうだが、「いわゆる“人食いザメ”といわれるのは、ホオジロザメ、オオメジロザメ、イタチザメの3種。ホオジロザメは今や絶滅危惧種ですから、日本で遭遇する機会は、ほぼないでしょう」
こう指摘するのは、動物研究家のパンク町田氏だ。
「怖いのはイタチザメ。目の前にあるものを試し噛みする習性があるんです。サメの泳ぐ速度は40~50キロ。よって海中では勝ち目はない。サメ被害が多いオーストラリアでは、水着やウェットスーツをウミヘビやカサゴなど、毒を持つ生物の柄にするとサメが嫌がる効果があるといわれています」(前同)
同様に、“サメの死骸臭のスプレー”が有効という説もあるという。ただ、岩場などで切り傷などを作った際は、注意が必要だ。
「サメは嗅覚と聴覚に優れているので、生傷があるときに、海に入るのは避けたほうがいい。“血の臭い”がしますから」(同)
サメを引き寄せる“NG行為”は他にもある。
「サメはキラキラ光る物に寄ってくるので金属製のアクセサリー、原色の水着やウェットスーツはNG。排泄物の臭いにも敏感なので、海中で用を足すのも禁物です」(サーフショップ店長)
当たり前の話だが、何よりも大事なのは、「サメの目撃情報があったときは海に入らないこと」(前出の堀江准教授)。以上の点に注意して、久しぶりの海水浴を楽しんでほしい。