世界最高峰のレース「凱旋門賞」に挑むドウデュースの路線が、固まりつつあります。
日本ダービーを勝った後、滋賀県のノーザンファームしがらきに放牧。早くやって来た夏を順調に過ごしたドウデュースは、今週中にも栗東の友道厩舎に帰厩し、9月2日、成田空港から、フランスのシャルル・ド・ゴール空港への直行便で出国することになりました。
ダービー直後の話し合いでは、「ステップレースを使わず、ぶっつけで凱旋門に挑むというのも選択肢の一つだよね」と直行案も出ていましたが、彼は、一度、叩いたほうが、より力を出せるタイプの馬です。
そこで、本番の凱旋門賞と同じ条件……ロンシャン競馬場の芝2400メートルで行われるG2ニエル賞(9月11日)を使ったらどうかという案が浮上。レースに合わせ、9月2日に出国することになりました。
僕が、このニエル賞に挑んだのは、2010年のヴィクトワールピサ(4着)と、13年のキズナ(1着)の二度。いずれも、凱旋門賞へのステップとして臨んだレースです。
本番の凱旋門賞は、ヴィクトワールピサが7着。キズナは4着と、残念ながら、夢への扉を開けることはできませんでしたが、欧州の深い芝、フォルスストレート(偽りの直線)と呼ばれるトリッキーなコースを実際に馬が体験できたことは、プラスだったと思います。
理想は、余力を残したままニエル賞を勝って、本番凱旋門賞で、すべての力を出し切ること。
もちろん、思い描いた通りにいかないのが競馬で、だからこそ、面白いんですが……。しかし、凱旋門賞が終わった後の勝利騎手インタビューで、「すべてが思い描いた通りに運びました」と言えたら最高です。そのためには、馬だけでなく、僕も、気力、体力、精神面……あらゆる面において、順調さを欠くわけにはいきません。
函館に拠点を据えた夏競馬の前半戦は、10勝、2着12回。1着と2着の数を逆にしたいと臨んだ夏競馬の後半戦、1回札幌初日、2日目も、2勝2着6回。自身へのムチがまだ足りなかったようです(苦笑)。
取りこぼした分を合わせて……いや、倍返し、3倍返しする気持ちで挑むので、期待していてください。
今週末に予定されている重賞は2つ。1つは、新潟のG3レパードS。もう1つが、札幌のG3エルムS。僕は、エルムSに挑む予定です。
デビュー当時から、夏は小倉で乗ることが多かった僕が、このエルムSを勝ったのは……あれ、もしかして、まだ勝ったことがない!? いや、記憶をず〜っと、さかのぼると……ありました! このレースが創設された翌年、97年にバトルラインで勝利しています。狙うのはもちろん1着です。
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