関西に生息するアヤシくてオモロい人たちに、大阪出身・京都在住の人気ライター・吉村智樹が直撃インタビュー!
■40代で無職になって大ピンチ!そんな逆境を得意の絵で脱出!!
40歳を過ぎてからの転職は勇気がいるものだ。しかも畑違いの職業にくら替えとなると、相当な決意が必要だろう。
毒々しいタッチで人気のイラストレーター、福ハナ夫さん(47)は、なんとプロデビューして、まだ4年。不惑を過ぎて花開いた遅咲きの新人だ。
「20代から41歳まで、ずっと音楽スタジオのエンジニアをしていました。ところが、親会社がスタジオを他社に売ってしまい、失業してしまったんです」
40代で路頭に迷った彼。今後の生活に頭を痛めながらも、なす術がなく、気を紛らわせるために、幼少期から好きだったイラストをインスタグラムにアップしていた。
「幼い頃はラクガキばかりしていました。しかも、すでにクセが強い絵柄でしたね。あの頃の自分が、ふとした拍子によみがえり、“また描いてみよう”と思ったんです。なんせ仕事を失って、時間はたっぷりありましたから(苦笑)」
すると、イラストを見た雑貨店やバイヤーから、「うちで商品を作りませんか」「うちのイベントに出品しませんか」と、続々と声がかかるようになったという。逆境の中で生みだした絵が、プロのイラストレーターになるきっかけとなったのだ。人生は、どこにチャンスが転がっているか分からない。
「イラストで食べていくのだと腹をくくってから、本気で練習しました。この6年間で描いたイラストは約8000枚。家中、イラストが山積みで、足の踏み場もない状態です」
■描いた「似顔絵」は4年で2000人
彼のイラストがブレイクした起爆剤の一つが「似顔絵」。催事場で客の似顔絵を描くのだが、意地悪なほどにデフォルメが効いていて、誰しもプッと吹き出してしまう。
このパンチがある似顔絵が「笑える」とSNSで火がつき、一日に30人もの客が「私の顔も描いて!」と、やって来るようになった。そうして、この4年間で、なんと2000人以上の顔を描いたのだそうだ。
「小学生の頃、クラスメイトや先生の顔を、ちょっとイジリながら描いていたんです。それが好評で、一目置かれるようになりました。学校で一番コワい先生の似顔絵を描いたときも、爆笑しながら“将来は絵描きさんになったら、どうや”と褒めてくださって。“イラストって、こんなに人に喜んでもらえるんだ”と感動したのを覚えています」
今や、イラストを目にしない日はないほどの人気を得た福ハナ夫さん。将来の夢は?
「海外に進出したい。台湾のお客さんが僕のイラストを、とても喜んでくださって。それから、世界中に自分の絵を届けたいという気持ちが強くなりました」
コロナ禍が明けたら、海外の催事場で外国人の似顔絵を描いているかもしれない。そして、その姿は、転職に悩む中年たちに勇気を与えるはずだ。