今年初め、1ドル115円だった為替相場だが、今や130円台を推移しているのは、ご存じの通り。2月にロシアがウクライナへの侵攻を開始して以降、一気に下落が進んだ。
「7月14日には、約24年ぶりの円安水準となる1ドル139円台にまで値下がりしました。アフターコロナ政策で経済を先手で動かした欧米と、後手に回った日本の違いが如実に出ている。アメリカがインフレを抑えるために利上げをして引き締めを行う一方、日本は金融緩和を継続したことで、さらに円が売られました」(経済誌記者)
これに、大きな影響を受けているのが我々、庶民だ。経済アナリストの森永卓郎氏は、こう言って嘆く。
「円安に加え、長引くコロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻による資源の高騰というトリプルパンチの状況です。そうした状況で、10月までに、1万6000品目が追加値上がりというデータも出ています。まさに今が、ドン底の不景気であると言えるでしょう」
庶民にとっては物価高騰を招く、憎むべき円安。ただ、自動車や電子部品などに代表される輸出産業には追い風となり、今年に入って過去最高益を記録する企業も出ている。しかし、ここにきて向かい風が……。
「徐々に改善傾向に向かっているんですが、コロナの蔓延によって、半導体不足が世界的な問題となり、こうしたメーカーに打撃を与えていますね。日本でも政府主導で工場を作るなど、対策を進めていますが、改善には、もう少し時間がかかるでしょう」(前同)
長期化するウクライナ侵攻もまた、日本経済へのボディブローとなりそうだ。
「今や欧米各国はコロナから脱却し、通常運転に戻りつつあります。そこにウクライナ問題が勃発したため、原油や資源の奪い合いが起き、価格がずっと高止まりしているんです。それに伴って世界的なインフレが続いているので、年内はこの状況が基本的には変わらないはずです」(前出の経済誌記者)
では、この不況の出口はどこにあるのか。前出の森永氏はアメリカ経済の動向を注視すべき、と指摘する。
「アメリカは超好景気であると同時に、超物価高なんです。そのため、今後、アメリカは金融の引き締めを行わなければならず、経済は失速に向かうでしょう。米経済が失速すれば、資源も暴落に向かいます。すでに小麦やガソリンの値段は一時に比べ落ち着いています。日本の物価高の要因の大部分がこうした資源高によるもの。年内は高値維持でも、その後は沈静化すると思います」(森永氏)
ただ、アメリカ経済が失速すれば、日本にも影響が。
「米経済の失速の余波で日本経済も失速、という可能性はあります。それをどう乗り切るかは、政権の手腕に期待ですね」(前同)
景気回復への道は、簡単ではなさそうだ。