リーディングトレーナー3回、最多賞金獲得調教師を2回、最高勝率調教師を7回、優秀調教師賞10回など、数々の実績を残し、平成26年度の顕彰者にも選ばれた“名伯楽”伊藤雄二先生が、お亡くなりになりました。
ニュースでは、「元調教師・伊藤雄二さん」となっていましたが、僕にとっては、今でも伊藤先生です。
僕がデビューしたときには、すでに押しも押されもしない大調教師でしたが、あんちゃんの僕にも、とても気さくに話しかけてくださいました。
初めて先生の馬に乗ったのは、デビューした1987年5月23日、阪神1Rのマリンスワローです。
結果は3番人気の3着。2戦目が5月30日の阪神6Rで、乗せていただいたのはアキノディクター。結果は3番人気9着。このとき勝ったのが、僕に初勝利をプレゼントしてくれたダイナビショップ……というのも、競馬の持つ不思議な縁かもしれません。
先生の馬で勝つことができたのは、この年の12月20 日7R、4歳以上400万下のレースです。パートナーはノーザンテースト産駒のダイナレアリティー。JRA通算65個目の勝ち星でした。
2人で挙げた白星は、全部で152個。この中には、6つのG1勝利がありますが、始まりは、“伝説の出遅れ”シャダイカグラの桜花賞でした。
他にも、初めてまたがったときに、「来年のダービーは、この馬でいきましょう」と気負う僕を横目でチラッと見ながら、「牝馬だけどな」とあきれるような顔でつぶやいた、02年の秋華賞、エリザベス女王杯の二冠馬ファインモーション。05年の秋華賞を制したエアメサイア……。
すべて、いい思い出ですが、一番はやっぱり、96年のオークス馬、エアグルーヴとともに挑んだ97年の天皇賞(秋)のレースです。
あの時代、牡馬と互角以上に渡り合い、新たな時代の扉を開いた彼女の走りは、伊藤先生の情熱が引き出したものでした。
先生に教えていただいたことの一つ一つ、交わした言葉の一つ一つが、今も僕の中で生きています。
先生に、「おーっ、豊も上手に馬に乗れるようになったな」と言っていただけるように、これからも頑張りますので、どうか見守っていてください。
先生に捧げる勝利を――。今週末、9月3日は札幌、4日は小倉競馬に参戦する予定です。
期待してほしいのは、4日小倉で行われるG3小倉2歳S。僕のパートナーは、須貝尚介厩舎、ハーツクライ産駒のクリダームです。
アルーリングボイス(05年)、アサクサゲンキ(17年)、ファンタジスト(18年)、メイケイエール(20年)と、これまでに4度のV。5つ目の勝利を目指して、ゴールするその瞬間まで、全力騎乗で頑張ります。どうか期待していてください。
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