ここまでG1・6連勝を含む10戦10勝という圧倒的な強さを誇るバーイードが、ラストランとして選んだのは、「ブリティッシュ・チャンピオンズデー」のメインレースとして行われたG1・チャンピオンSでした。

――いったい、どれだけ強いんだろう? その思いは、僕も皆さんと同じです。

 土曜深夜にグリーンチャンネルで放送があるというので、阪神の調整ルームでバーイードの走りに焦点を合わせていました。

 雨の影響で、当日のアスコット競馬場の馬場状態は「GOOD TO SOFT」。日本流で言えば、稍重です。

 9頭立ての最内枠から出遅れ気味にスタートしたバーイードは、道中、2番人気のアダイヤーを見る形で、6、7番手を追走。最終コーナーでは、抜け出そうとするアダイヤーの後ろの位置につけていました。

 この時点で、レースを見ているほぼすべての人が、最後の直線で力強く抜け出してくる、いつものバーイードの走りを頭に思い描いていたはずです。

 ところが――。J・クローリー騎手が、どんなに懸命にステッキを振っても、肝心のバーイードは、最後まで反応することはありませんでした。

 まさかの結果でしたが、騎乗していたクローリー騎手、W・ハガス調教師にとっては、まさかどころの騒ぎではなかったはずです。

 おそらく、最後の直線では、「どうした!?」という言葉と、「こんなはずじゃ……」という言葉を何度も繰り返していたのではないでしょうか。僕にも、その気持ちは痛いほど、よく分かります。

 なんとなく、僕まで気落ちしてしまいましたが、「さすが!」と思わせてくれたのが、ハガス調教師のコメントでした。

「結果には、ガッカリしています」と、肩を落とした後に続けた言葉が……、「彼が素晴らしい馬であるということに変わりはありません。彼は、よくやったと思います」と馬を労わると、最後には、こう言いました。

――Itʼs Horse Racing. そうです、これが競馬なんです。

 9分9厘、勝利をつかみながら、最後の最後で勝利がこぼれ落ちてしまった。その反対に、すべてがうまくハマった結果、勝利を手に入れた。負けた理由が、まるで分からないときもあれば、勝ったジョッキーにも、はっきりと理由が分からない勝ちもあります。でも、それが競馬です。

 もしかなうなら、一度、バーイードに跨ってみたかったし、それが難しければ、同じレースに出走し、彼のすごさを体感してみたかったというのが、騎手としての僕の素直な思いです。

――何歳まで乗るつもりなんだ? という声が聞こえてきそうですが(笑)。今は、彼の血を受け継いだ仔に乗れる日を楽しみに待ちたいと思っています。

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