これまで数え切れないほど多くのレースに乗ってきましたが、100%自分が思い描いた通りにレースが動いたことは、数えるほどしかありません。
それでも、経験を積むごとに、ほぼ想定通り、というレースは増えてきて、そこから先、「こういう競馬をしたい」「こう乗ったら、勝てるチャンスが見つかるはずだ」という、一つの道が見えてきます。
11月23日に行われた交流重賞、浦和記念も、その一つでした。
パートナーのクリノドラゴンとは、未勝利のときから何度もコンビを組んでいて、長所も短所も、しっかりと手の内に入っています。
小回りコースに水の浮いた不良馬場はマイナス要素ですが、彼の長所を最大限生かすには、前半は後方待機、最後の直線で勝負。これが、僕が見つけた勝利への道でした。
何度も頭の中で想定を繰り返し、こう! と決めたら、最後は馬の力に賭けるだけ。期待以上の走りで初重賞制覇を成し遂げたクリノドラゴンは、今後が楽しみな1頭です。
11月27日、東京競馬1R2歳未勝利戦、プラチナジュビリーで挙げた勝利も同じです。
ダッシュ力があって、いかにも短距離向きというタイプの馬だけど、最後が少し甘くなる。じゃあ、どう乗ったら、勝つチャンスを広げることができるか? あれこれ想定した中で、最後に出した結論は……前半でセーフティリードを取るという競馬でした。レースは、思い描いていた通りに進み、会心の勝利だったと思います。
ただ……。想定通りに進んだからといって、必ずしも、それが勝利につながるわけではありません。
26日の阪神12R。27日東京2Rと5R。そして、もう一つ、メインのジャパンカップは、ほぼ想定した通りに運びましたが、最後は上位馬に力負けしてしまいました。
一つのミスもなく、道中で不利を受けることもなく、馬も力を出し切っても勝てないというのが競馬の難しいところです。こういうときは、上位馬の強さを褒めるしかありません。
気持ちを切り替えて、今週の騎乗馬について、お話しましょう。
12月10日は、中京でG3中日新聞杯、11日は中山でG3カペラS、阪神でG1阪神JFが行われますが、僕が騎乗依頼をいただいたのは、栗毛の快速、藤岡厩舎のジャックドール。レースは、香港のシャティン競馬場で11日に行われるG1、香港カップです。
香港カップといえば、サイレンススズカと初めてコンビを組んだレース。結果は5着でしたが、あれが、僕とサイレンススズカが紡いだ物語の始まりでした。
初戴冠をプレゼントしてくれたのは、2015年のエイシンヒカリ。今回、2度目のVを狙います。楽しみ? もちろんです。誰よりも、僕自身が一番、ワクワクしています!
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