関西に生息するアヤシくてオモロい人たちに、大阪出身・京都在住の人気ライター・吉村智樹が直撃インタビュー!
■話題作を撮った映画監督が語る映画とラーメンの共通点とは?
この春公開の映画『NEVER MIND DA 渋さ知らズ 番外地篇』が話題だ。この作品はジャズビッグバンド『渋さ知らズ』結成30周年の記念公演の撮影から始まったドキュメンタリー。コントラバス奏者の不破大輔氏が陣頭指揮を執り、ダンサーや舞台俳優までもが参加する。過去にはステージに40名近い人員が並び、歴代メンバーは100名以上に及ぶというからすごい。
「渋さ知らズといえば“フジロックフェスティバルに出演して若者が盛り上がった”など、現象面ばかり語られる場合が多かった。彼らの魅力は、それだけではない。プレイヤーがせめぎ合い、何をしでかすか分からない自由さが醍だい醐ご味みです。そこを、しっかり描きたかった」
監督の佐藤訪米さん(53)は、こう語る。そんな彼もまた、一筋縄ではいかない生き方をしている。彼は映画監督であるとともに、なんと23年ものキャリアを誇るラーメン職人なのだ。
佐藤さんが腕を振るうのが、京都大学の裏手に位置する『中華そば みみお』。鶏ガラ、煮干、野菜など素材のうま味を引き出したスープ、京都の老舗「河道屋倖松庵」の中華麺、厳選した国産豚バラ肉を煮たチャーシューと、どれも絶品。あっさりシンプルでありながら、他店にはない独創的な味で人気が高い。
「修業経験はありません。独学です。自分のひらめきを大事にしながら、うまさを追求していったら、どこの系統にも属さない味になりました」
インスピレーションで、こんなに極上の味が生み出せるとは。まるでフリーな演奏で観客を酔わせる、渋さ知らズのステージそのものではないか。
■やり始めたことは投げ出したくない!
映画監督としての彼の、作品の劇場初公開は1997年。助監督経験を経て『京極真珠』でデビューした。
しかし、映画監督だけでは食べてはいけない。そんなとき、たまたま出会った旅人から「俺と一緒にラーメン屋をやらないか」と持ち掛けられた。
なんとか開業資金を集めて2000年に開店したが、謎の男は「飽きた」と言って半年で消えた。残された彼は「やり始めたことを途中で投げ出したくない」と、映画とラーメンの両道を歩む決意をしたのだ。
「映画とラーメンは似ている。ラーメンがまずければお客さんは二度と来ない。映画がつまらなければ、お客さんが入らない。反対に、よいものを作れば世界にだって行ける。自分にとって、映画とラーメンは同じ価値があるんです」
ウワサの映画『NEVER MIND DA 渋さ知らズ 番外地篇』は新宿Kʼs cinemaにて公開中。その後は順次、全国公開が予定されている。迫力の映像と、ラーメンのように五臓六腑にしみわたる激ウマのサウンドを、ぜひ劇場で、大音量で体験してほしい。
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