「実力派怪談師の最恐コレクションとは!?」旭堂南湖「滋賀の怪談を現代に伝える男の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!の画像
旭堂南湖

 関西に生息するアヤシくてオモロい人たちに、大阪出身・京都在住の人気ライター・吉村智樹が直撃インタビュー!

■数々の古戦場や雄大な琵琶湖にまつわる怪談は一聴の価値あり

 NHK大河ドラマどうする家康』で注目されているのが滋賀県。滋賀と家康の関係は深い。近江(現在の滋賀)の姉川畔で繰り広げられた織田信長徳川家康連合軍による「姉川の戦い」は、「死傷した兵士の血で河の水が赤く染まった」と伝えられるほどの凄惨さだった。

「滋賀は姉川や賤ヶ岳など古戦場が多く、血原、血川橋など物騒な地名が現在も残っています。そのためなのか、心霊にまつわる言い伝えや目撃例が、たくさんあるんです」

 こう語るのは滋賀出身の講談師、旭堂南湖さん(49)。名前についた「湖」は琵琶湖を意味している。育ったのは甲南(現在は甲賀市に合併)。忍者屋敷や数々の露天風呂、ブルーベリー栽培などで知られる風光明媚な場所だ。

「自然が豊かで、とてもよい所なんですが、夜が怖かった。田舎なので街灯が少なく、陽が暮れると辺りは真っ暗になる。窓を開けると、森から獣の鳴き声が聞こえてくる。夜の闇が恐ろしくて、いつも豆電球を点けたまま眠っていました」

■恐ろしさの奥底には懐かしさや温かさも

 幼少期は怖がりで、テレビで心霊番組が始まると、すぐにスイッチを切っていたという南湖さん。そんな彼が新刊『滋賀怪談 近江奇譚』(竹書房怪談文庫)を上梓した。栗東にあるという、切ると血を流す杉の木、火の玉が浮かぶ能登川の首切り関、河童の皿と呼ばれ、割ると祟りがある霊仙山の岩など、その地の怪異な伝承や実体験を取材した、いわば怪談版滋賀紀行だ。

 特に琵琶湖に浮かぶ半透明のモノノケのエピソードは、滋賀でしか味わえない恐怖がある。

「琵琶湖は淡水ですから、海水と違って体が浮かばない。水難事故が起きると助からない場合も多く、それだけに恐ろしい逸話が多いんです」

 南湖さんが育った甲南にも、不気味な話がある。宅地造成で街が拓かれた際、地面を掘り起こすと、素朴で粗削りな地蔵がゴロゴロ出てきたという。

「昔の滋賀は交通の要衝で、旅人が行き交っていました。山道で行き倒れになる人も多かったんだそうです。そのたびに村人が質素なお地蔵様を彫って弔った。おそらく、お地蔵様の数だけ、亡くなられた方がいるんでしょう。地蔵盆の日に、ご近所のおじいさん、おばあさんが語ってくれました。私は、そんな話を聴くひとときが好きだった」

 彼が集めた滋賀怪談は、恐怖だけではなく、どこか両親や、ふるさとの祖父、祖母が寝床で語ってくれているような温かさがある。そして、滋賀を旅してみたくなる。

 6月9日(金)、大阪の百年長屋にて「南湖の会」が開催される。『滋賀怪談 近江奇譚』の発売を記念し、3席の怪談を読むのだ。

 話題の新刊とともに、怖くて、でも琵琶湖のように、おおらかな名人芸に、ぜひ触れてみてほしい。

よしむら・ともき「関西ネタ」を取材しまくるフリーライター&放送作家。路上観察歴30年。オモロイ物、ヘンな物や話には目がない。著書に『VOW やねん』(宝島社)『ジワジワ来る関西』(扶桑社)など

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