「音楽でも食べ物でもハッピーでピースフルになってほしい!」フジワラカズオ「調味料を開発したラッパーの巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!の画像
フジワラカズオ

 関西に生息するアヤシくてオモロい人たちに、大阪出身・京都在住の人気ライター・吉村智樹が直撃インタビュー!

■夢半ばで挫折したラッパーを復活させた父のひと言とは?

 2022年に商品化された「梅からし」が話題だ。

「梅からし」とは、梅肉と和からしを練り合わせた調味料のこと。パンチが効いた酸っぱさと辛さのバランスが絶妙で、肉、魚、野菜など、どんな食材にもよく合う。

「おにぎりの具にしたり、ポテトチップスにディップして酒のつまみにしたり、和食にも洋食にもマッチします。合わない料理を探すのが難しいほどです」

 こう語るのは、梅からしのメーカー「あかふじ屋」を立ち上げたフジワラカズオさん(37)。実は彼には、もう一つの意外な顔がある。なんと、ラッパーなのだ。

「ラッパーが、なぜ調味料を開発したの?」。その背景には、人生の辛さや酸っぱさを体験した男の生きざまがあった。

 彼は広島出身。学生時代から「人を喜ばせたい」との気持ちが強く、高校を卒業して、芸人になるために大阪の養成学校に入学した。

 しかし、構成作家に媚を売らなければ認められないシステムに嫌気が差し、大阪アメリカ村のアパレルショップでアルバイトを始める。そこで出会ったのが、ヒップホップだった。

「店の先輩がクラブイベントを主催していて、手伝ううちに自分もMCをするようになりました。とがりまくって、ヤンチャだった僕に、ヒップホップのカルチャーが刺さったんです」

 22歳でアーティストデビューし、社会を鋭く斬るラップで頭角を現した。たちまち、『nobodyknows+』など、日本を代表するアーティストたちのフロントアクトを務めるほどに成長する。

 しかし、クラブシーンの縦社会や、反社会勢力の介入などに嫌気が差し、30歳で不動産会社に就職。人生で初めてサラリーマンになった。そんなとき、再び転機が訪れる。

■「この調味料ヤバい」口コミで注文殺到!

「父が“夢を諦めるな”と言ったんです。昔気質の大工で暴れん坊だった父が、音楽活動に理解を示してくれたのが意外でした」

 もう一度、マイクを握ろう。そう決意したフジワラさんは会社を辞め、ステージに返り咲いた。しかし、すぐに再び音楽で食べていけるようにはならないため、いったん居酒屋の雇われ店長になる。そこでふと、ある疑問が湧いたのだ。

「料理を作っていて、“なぜ、おでんにつける調味料は、黄色いからしだけなんだろう”と。自分で新しい味を生みだしてみたくなったんです」

 そうして試行錯誤の末にたどり着いたのが、意外と誰もやっていなかった梅肉+和からしのサンプリング。

 いつしか「この調味料、ヤバいぞ」と口コミで広がり、「この梅からしだけを売ってほしい」と、リクエストが相次いだ。クラブイベントで発売すれば飛ぶように売れ、現在は福井県に自家栽培の梅園を持つほどの生産量になった。

「音楽でも食べ物でも、ハッピーでピースフルな気持ちになってほしいです」

 初めは「なぜ、ラッパーが調味料を?」と不思議に思ったが、曲も調味料も、彼にとって、どちらもメッセージを伝える作品だった。

よしむら・ともき「関西ネタ」を取材しまくるフリーライター&放送作家。路上観察歴30年。オモロイ物、ヘンな物や話には目がない。著書に『VOW やねん』(宝島社)『ジワジワ来る関西』(扶桑社)など

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