「落語も料理も名人級!」にぎわい亭のり巻きさん「落語も絶品な寿司職人の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!の画像
にぎわい亭のり巻き

 関西に生息するアヤシくてオモロい人たちに、大阪出身・京都在住の人気ライター・吉村智樹が直撃インタビュー!

■師匠がいない社会人落語家修業は飲食店に飛び込みで!?

 大阪の茨木にある『成田家』は、今年で創業62年目を迎える寿司割烹の名店だ。

 特に3代目店主である浅川和彦さん(53)が作る特製巻き寿司『上巻き』は、茨木地卵の玉子焼きや鰻、海老など具がたっぷり。

「節分の日には1000本を売り尽くす」ほどの人気なのだ。

 うまい寿司で食通をうならせる彼には、もう一つ、「社会人落語家」という顔がある。

 芸名は得意料理にちなんだ「にぎわい亭のり巻き」。料理長に就任した44歳から落語を始め、アマチュアながら、すでに70席以上もの高座を経験した。

 全国の強者が集う社会人落語日本一決定戦では、2年連続で本戦に出場。話術の巧みさと本職顔負けの愛嬌で、地元では顔を指すほどの有名人なのだ。

「高校の同級生だった桂吉弥くんが落語家になり、羨ましかった。大学生になってからも、ドライブをするときは音楽よりも落語を聴いていたくらい好きでした。そして料理長になった年に、商工会議所主催の音楽イベントで、古典落語の『ふぐ鍋』を演らさせていただいて、これがウケましてね。すっかり夢中になってしまったんです」

■寿司職人だからこそ出せる味を大事に!

 社会人落語家の悩みのタネは、稽古をつけてくれる師匠がいないこと。そこで浅川さんは休日のたびに大阪の天満天神繁昌亭や神戸新開地の喜楽館など、寄席に通って勉強をした。

 さらに近所のたこ焼き屋、スナック、居酒屋などに「一席やらせてください」と頼み込み、客の「誰やねん」という冷たい視線と闘いながら、舞台度胸をつけていったのだ。

 にぎわい亭のり巻きの落語の特徴は、食べ物をメインにしていること。初舞台で語った「ふぐ鍋」、かまぼこがキーワードとなった「鮫講釈」など、いわばグルメ系である。

「寿司職人が演じる落語という部分を大事にしたい。料理人がやるからこそ、ネタがバチッとハマると、お客さんにウケる。そのため、古典だけではなく『わさび寿司』『お寿司誕生物語』など、新作も書きました」

 そうして四十路を過ぎて落語に熱中するようになり、料理にも変化が表れた。

「古典落語の多くは江戸時代を舞台にしています。人々がギスギスしていない、あの時代の雰囲気が私は好きなんです。

 店では江戸時代の調味料「煎り酒」(日本酒に梅干などを入れて煮詰めたもの)をコース料理に組み込むなど、味でも、いにしえの日本を感じてもらいたいと考えています」

 この頃は地元の茨木をさらに盛り上げるため、市内の溝咋神社にまつられた「玉櫛姫」のストーリーを落語や紙芝居、歌で伝える運動に尽力している。

 成田家の座敷にプロを招いて落語会を開催したり、創作落語の投稿サイトを起ち上げたりするなど、落語と料理と地元を愛する彼。

 9月17日(日)に茨木で開催される「秋のガンバるフェスタ」で舞台に上がる。社会人落語を侮るなかれ。のり巻きの落語のウマさに、きっと舌を巻くはずだ。

よしむら・ともき「関西ネタ」を取材しまくるフリーライター&放送作家。路上観察歴30年。オモロイ物、ヘンな物や話には目がない。著書に『VOW やねん』(宝島社)『ジワジワ来る関西』(扶桑社)など

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