「ここは誰も排除しない場所なんです!」なすびさん(23)「秘境と呼ばれるビルを撮った女の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!の画像
なすび

 関西に生息するアヤシくてオモロい人たちに、大阪出身・京都在住の人気ライター・吉村智樹が直撃インタビュー!

■多くの人が足繫く通う謎のビル!どの知られざる姿が写真集に

 大阪の西心斎橋、通称アメリカ村に「日宝三ツ寺会館」という雑居ビルが建っている。竣工から50年以上の歴史があるこのビルは、地下1階、地上4階に約60軒ものバーやスナックが、びっしりと密集。どの店も極めて個性的。一見客は扉を開けるのに度胸が必要だ。またマスコミ取材NGの店が多いため、繁華街にありながら内部の全貌を知る者は少ない。そのため、いつしか「大阪の九龍城」「都心の秘境」「ミナミの魔窟」などと呼ばれるようになった。

 そんな謎多き不夜城に踏み込んで撮影した写真集『三ツ寺会館』(托口出版)が話題となっている。

 ページを開くと、天井から、おびただしい数の人形がぶら下がっていたり、壁一面が白ペンキで落書きされていたり、動物の骨が壁に掲げられていたり。店主のキャラクターが存分に発揮された空間が、まるで封印を解かれたかのように公開されているのである。

「撮影交渉は大変でした。どのお店も営業時間がバラバラで、お休みの日も気まぐれ。やっと店主さんにお会いできても、断られたうえに説教されたケースもありました」

■現役バーテンダーのカメラマンが撮影!

 そう語るのは、23歳のカメラマン、なすびさん。プロの写真家であり、三ツ寺会館にあるバー「SIX/NINE」のバーテンダーを務めている。

 彼女は実際にこのビルで働いているからこそ、他店のマスターや酔漢のリアルな姿を撮影できたのだ。

「三ツ寺会館をよく知らない人だと絶対に撮ることができないカットが、この写真集にはたくさん掲載されています。ただ、刺激的なポスターやオブジェ、タトゥーを入れた人も写っているため、実は一度、印刷を断られているんです」

 20代の若さながら、印刷所も躊躇する写真集をよくぞ上梓したと、多くの称賛の声が挙がっている。最近は外国人観光客が、この写真集を手に三ツ寺会館を訪れるという。ウワサは海外にまで広がっているのだ。

 なすびさんは長崎県出身。空間デザイナーの父、ハウステンボス専属カメラマンをしていた母のもとで育ち、なんと9歳でカメラの操作を覚えた。高校時代に外海海岸の教会群を撮影した写真が県展で入選し、そこから破竹の勢いで、さまざまな新人賞を獲得した。

 写真の勉強のため故郷を離れ大阪芸術大学の写真学科に入学。知人に連れられてやって来たのが、この三ツ寺会館。建物の古さと独特な雰囲気に初めは抵抗感があったが、自由に過ごす客たちの人柄にひかれ、いつしか従業員になった。

「プロレス、競馬、麻雀、政治、宗教、音楽、みんな誰に気兼ねすることなく好きな話をしている。私は知り合いがまったくいない大阪に一人で出てきて、孤立感があったんです。けれども三ツ寺会館は、どんな人も排除しない。そこに救われました。そして次第に愛着が芽生えたんです」

 生きづらいと感じているあなた、一見、近寄りがたいこのビルに、探し求めた止まり木があるのかも。

よしむら・ともき「関西ネタ」を取材しまくるフリーライター&放送作家。路上観察歴30年。オモロイ物、ヘンな物や話には目がない。著書に『VOW やねん』(宝島社)『ジワジワ来る関西』(扶桑社)など

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