「世界中へ配信して落語ファンを増やしたい!」露の新幸さん(48)「自ら寄席を開いた落語家の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます!の画像
露の新幸

 関西に生息するアヤシくてオモロい人たちに、大阪出身・京都在住の人気ライター・吉村智樹が直撃インタビュー!

■寄席は小さくとも志は無限大!新たなる落語の“聖地”が誕生!!

 大阪の天満に『落語スペース 猫も杓子も』がオープンした。主人は落語家の露の新幸さん(48)。芸人が自ら寄席小屋を開くのは珍しいとあって、早くも話題になっている。

「費用を抑えるため、内装工事は、ほとんど私一人でやりました。舞台も高座も、自分で材木を組み立てて設えた手作りなんです。台所を楽屋に改装するため、もともとあったシステムキッチンを引きはがすのに5日もかかりました」

 場所は雑居ビルの3階。壁も床もコンクリート製なので、そのままでは声が反響してしまう。そのため自分で吸音材を買って貼り巡らせるなど、落語に適した環境になるよう努めた。

「D1Yのおかげで、当初の概算の半分の出費で収まった」というから、上方落語のスタンダード『始末の極意』を地で行く倹約リノベーションだ。額に汗して寄席小屋を造り上げた彼だが、初めは住まいを探しており、「寄席を開くつもりはなかった」という。

「私は“物件マニア”で、間取り図を眺めるのが趣味なんです。それだけではなく、いい家に出合うとどうしても住みたくなる。この3年の間に7回も引っ越ししました。それで新たに“落語の稽古ができる住居はないかいな”と探していると、ここに巡り合ったんです。住むことはできないのに、一目惚れしてしまいまして」

 そうして誕生した寄席小屋『猫も杓子も』は定員およそ20名。人によっては、「狭い」「少ない」と感じるかもしれないが、配信に特化しており、世界中から舞台を鑑賞できる。

 ある意味で「とてつもなく広い」寄席と言える。配信内容によって視聴料金を設けたり、「投げ銭」(オンライン送金)で演者を応援したりと、どこにいても落語会に参加できるのだ。

「ライブ配信の強さならば、関西の寄席の中でも随一だと自負しています。落語を寄席でも配信でも楽しめる文化を作っていきたい。そして、落語ファンを増やしていきたいんです」

■誰でもウェルカムな出会いの場にしたい

 落語の将来を考える新幸さんの考え方に触発され、創作落語や、耳にする機会が少ない珍しい噺、埋もれた古典落語の復刻など挑戦的な姿勢を見せる演者も多いという。ここに来れば、レアな落語体験ができるのだ。

 また、午前は1000円、午後は2000円、稽古ならば500円(すべて1時間単位)という破格の安価で貸し出しており、若手の勉強会やネタおろしにも最適。

「これまで自分は、さまざまな人との出会いによって生かされてきました。“猫も杓子も”と名づけたのは、誰でもウェルカムという意思表示なんです。いろんな人と分け隔てなく接する場所にしたいですね」

 令和に誕生した最新型の寄席に、猫も杓子も、キー公も清やんも、あなたもそなたも、訪れてみてほしい。

よしむら・ともき「関西ネタ」を取材しまくるフリーライター&放送作家。路上観察歴30年。オモロイ物、ヘンな物や話には目がない。著書に『VOW やねん』(宝島社)『ジワジワ来る関西』(扶桑社)など

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