復帰に向けて治療とリハビリの毎日を送っている間にも、競馬カレンダーは、どんどん進んでいます。驚愕の走りを見せたイクイノックスの天皇賞(秋)。プレイディヴェーグが制したエリザベス女王杯。三冠牝馬リバティアイランドとイクイノックスの対決に沸いたジャパンカップ。そして、イクイノックスの現役引退……。

 17日には、朝日杯FS。“世界で最も馬券が売れる日”といわれる24日は、グランプリレースの有馬記念が待っています。

 僕が朝日杯FSを制したのは2年前。パートナーは、3番人気のドウデュースでした。09年、ウオッカをパートナーにヴィクトリアマイルを制し、JRA平地G1完全制覇まで、残すは、この朝日杯FSとなったときは、とにかく勝ちたいという気持ちが強くなっていました。

 その後、大阪杯とホープフルSがG1に昇格。大阪杯は昇格1年目に、キタサンブラックで勝った後も、朝日杯FSを勝ちたいという気持ちは、さらに強くなっていたような気がします。

 1回勝ったから、もう1回勝ちたい。2回勝ったら、次は3回勝ちたい――。勝負事に関する僕の精神構造は、そういうふうにできているようです(笑)。だからでしょう、これまで3度勝っている有馬記念も、“もう十分です”とは、小指の先ほども思いません。

 僕自身、まさかと思いながらステッキを握りしめ、ゴールした瞬間、激しく心が震えた、オグリキャップの“奇跡のラストラン”。別れを惜しむように駆け抜けた、ディープインパクトの王者の走り。そして、鳴り止まない拍手と歓声を、胸を張って受け止めたキタサンブラックとのランデブー。すべてが僕の勲章です。

 でも、それと同じだけ、あと一歩が届かなかったレースが、心の傷として残っています。

■名馬でも敗北した8度の借りを返す

 若造だった僕に競馬の面白さ、すごさ、強い馬とは、どんな馬なのかを教えてくれたスーパークリークとメジロマックイーンに勝利をプレゼントできなかった89、91年の有馬記念。96、97年、2年連続で2着に甘んじたマーベラスサンデー。

 わずか4センチ差で、グラスワンダーの走りに涙をのんだスペシャルウィークのラストラン(99年)。9馬身という圧倒的な差をつけられながら、最後までファイティングポーズを取り続けた03年のリンカーン。

 本調子ではなかったとはいえ、唯一の黒星を喫した05年のディープインパクト。そして、展開のアヤで勝利が指の隙間から、こぼれ落ちた16年のキタサンブラック……。8度の借りはまだ返せていません。

 皆さんの思いに応えられるような有馬記念にできるよう、僕は僕の全力で挑みたいと思っています。

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