人生に役立つ勝負師の作法 武豊
見ていただけましたか? キズナの強さを
みなさん、見てくれましたか!? これがキズナの強さです。
昨年の「菊花賞」を制したエピファネイア、「オークス」「秋華賞」「エリザベス女王杯」と3つのGⅠタイトルを取った弟・幸四郎が乗るメイショウマンボとの3強対決で盛り上がった4月6日のGⅡ「産経大阪杯」。
サクラが咲き誇る阪神競馬場で主役の座に就いたのは、ダービー馬、キズナでした。
2日に行われた追い切り後、たくさんの記者の方に囲まれた僕は、言葉を選びながら、こんなことを切り出しました。
「さすがキズナだね」
ダービー前と同じフレーズです。
簡単に、「勝てますよ」と言えるほど、競馬は優しい勝負ではありません。
スタートからゴールまで、何が潜んでいるかわからない。それが競馬の面白さであり難しさです。
でも、しかし。追い切りで摑んだ手応えは、想像以上のものでした。
「しまいを伸ばすシンプルな追い切り。(ボコボコだった)馬場を考えるとタイムも速い。体がひと回り大きくなって、ガッチリした感じだね。体重も増えていると思う」
僕としては最大限の賛辞です。
そして、佐々木昌三先生も同じように感じたのでしょう。
僕とは違う言葉を使って、キズナの成長とこのレースに臨む覚悟を記者のみなさんに話していました。
「ここまでは理想的。凱旋門賞のときに比べても、ツーアップくらいすごい体になった。今回も休み明け初戦とは思っていない。1戦1戦がGⅠみたいなもの。全部が本番なんで」
負けたくないじゃなくて、負けられない。
勝てばいいというのではなく、勝ち方にこだわりたい――そのくらい強い気持ちで、僕は最後にこう締めくくりました。
「日本のエースとして期待を背負う馬だから」
レース当日、キズナは期待に違わない強さを見せてくれました。
ペースも位置取りも関係ない。キズナの競馬をすれば結果は黙っていても付いてくる。
道中、エピファネイア、メイショウマンボを前に見るようにして進んだのも、たまたまそういうカタチになっただけです。
たとえ違う展開になっていてもキズナの強さは変わらなかったと思います。
このレースで、唯一、首を傾げたのは、人気だけ。
なぜ2番人気だったのか、今でも不思議な感じがしています。
日本で一番強い馬はキズナ――この信念はこの先も揺らぎません。
さあ、そして――今週は牡馬三冠クラシックの第1弾「皐月賞」です。
僕のパートナーは、キズナと同じディープインパクトを父に持つ池江泰寿厩舎のトーセンスターダム。
デビューから3戦3勝、無敗のままここまで辿り着いたスター候補生です。
「いつか2人でダービーを勝ち、世界に打って出ようぜ!」
――小さい頃に交わしたヤストシとの約束を果たす時がもうそこまで来ています。
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