プチ鹿島の連載コラム 「すべてのニュースはプロレスである」

先週オバマ米大統領が来日した。焦点のひとつは「TPP」(環太平洋経済連携協定)交渉だった。

私は発売中の雑誌「KAMINOGE」で、TPP、つまり市場開放問題は1984年から1987年まで連載された漫画「プロレス・スターウォーズ 」にて予言されているというコラムを書いた。

「プロレス・スターウォーズ 」は、アメリカ側が日本プロレス界という黄金マーケットに興行戦争を仕掛け、ついには日米対決の幕がきって落とされたというストーリーだ。

アメリカVS日本の市場開放の構図はこの漫画で説明できるのだが、「TPP構想」についてはプロレスの他の歴史でも説明できる。

「TPP」とは「IWGP」なのである。

「IWGP」とは「インターナショナル・レスリング・グランプリ」の略。新日本プロレスのアントニオ猪木が提唱したもので、乱立する世界中のチャンピオンベルトを統一するという構想。関税の枠を取っ払い貿易ルールを統一しようというTPPのコンセプトと「ほぼ同じ」。

もっと似ているのは次の点。

TPPは当初はシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国間で小ぢんまりと始められた。ここにアメリカと日本が参加表明をして大規模になった。

IWGPも各国代表を集めたが、やはり日本(猪木)とアメリカ(ハルク・ホーガン)が目立った。最終決戦は東京だった。

では、大騒ぎしたIWGPは世界を統一できたのか?

ライバル団体・全日本プロレスのジャイアント馬場は「ローカルのチャンピオンベルトがまたひとつ増えただけ」と冷笑した。TPPも、貿易のルールがまたひとつ増えただけと馬場なら言っただろう。

その全日本プロレスと新日本プロレスが慌てて「経済連携協定」を結んだことがある。突如「共通の巨大な敵」が現れたからだ。それが1990年の「SWS」である。巨大資本メガネスーパーがプロレス界に参入し、選手を引き抜いて新団体を旗揚げした。

全日と新日は対抗し、選手の貸し借りなどで協力しあった。

今回アメリカと日本は激しくやりあった様に見えたが、要はそれだけ「対・中国」というテーマがあったからだ。巨大化していく中国に対し、日米は経済と軍事で対策を練る。全日と新日が手を握ってSWSに対したように。

グローバルになればなるほど「国益=団体益」がむきだしになる。浮かび上がる。

これもまた、プロレスから学んだことである。


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