経済ジャーナリスト 須田慎一郎が徹底予想!


実は筆者は、安倍首相とオバマ大統領の会食場所に設定された「すきやばし次郎」に行ったことがある。この店は、東京銀座の何の変哲もないビルの地下に店を構えているのだが、その味は一流。そして、値段の方は超一流と言って間違いないだろう。気になる勘定は、普通に飲んで食べて1人5万円~といったところ。その日の“会食”には、日米合わせて6人が参加したというから、我々、日本国民は合計で約30万円(その日は1日貸し切りというから会計はそれ以上に膨らむはず)もの接待費を負担させられたことになる。

しかし、これだけの高額接待をしておきながら、肝心の首脳会談の成果はというと、今一つというのが周囲の一致した見方だ。

特にTPPに関する交渉は、オバマ大統領サイドの攻勢に圧倒され、結局「原則合意」には至らなかった。そもそも、原則的に「例外なき関税ゼロ」を目指すオバマ大統領と、「聖域五品目」をとにかく死守したい安倍首相との間の溝は、そう簡単に埋まるものではないだろう。

こうしてオバマ大統領の3日間の訪日は幕を下ろしたが、もし仮に日本側が「関税ゼロ」を受け入れた場合、どのような影響が出てくるのだろうか。特に、農産物への影響はどの程度のものなのだろうか。筆者の友人の農水省の官僚がこう教えてくれた。

「我々のシミュレーションでは、小麦と砂糖の国内生産はほぼゼロになります。牛肉・豚肉などの生産は70%減少、米は30%強の減少です」

牛肉の生産が70%減少すると言っても、松坂牛や神戸牛の高級牛肉への影響はほぼゼロと見ていい。大きく影響を受けるのは、スーパーの店頭で「和牛」と表示された、乳牛(ホルスタイン)の牡を食用にした低価格の牛肉だ。

豚肉に関しては、「トウキョウX」などの銘柄豚はほとんど影響ないが、それ以外は米国産など外国産にとって代わられることになる。

こうして見ていくと、TPPへの加盟は、金持ちに対してはほとんど影響を及ぼさないが、普通の庶民の食生活には極めて大きな影響が出てくる、と言っていいだろう。

国産の乳牛を食べるか、外国産の食用牛を食べるのか……。まさに、究極の選択だ。


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