「娘は生きていればいま、35歳になっていた。14年間、つらい思いで過ごしてきた」

昨年11月、警察庁の有識者検討会に参加した事件被害者の父親は、ストーカーに娘を殺された遺族の心情を、こう切々と訴えた。

99年10月26日、埼玉県桶川市の路上で、上尾市在住の女子大生・Sさん(21)が、刃物で左胸と脇腹を刺され、死亡。通り魔の犯行も考えられたが、家族や友人の証言から一人の男が浮上する。Sさんの元恋人である元風俗店経営の小松和夫容疑者(27)だ。

容疑者は交際中、SさんにDVを加え、電話で行動を監視。耐えられなくなった彼女が別れを告げると、「父親をリストラさせるぞ」などと脅迫し、Sさん宅やSさんの大学、父親の勤務先周辺に大量の怪文書をバラまくなど、執拗な嫌がらせを繰り返していた。父親は、これらの被害を証拠物とともに警察に届けたが、相手にされず、告訴の取り下げまで提案されたという。そんな矢先に、Sさんが殺害されたのだ。
「実行犯は、小松容疑者の兄(32)が経営する風俗店店主(34)。ほかに2人がこの件に関与し、それぞれ刑に服しています。ただ、首謀者の小松容疑者は00年1月、潜伏先の北海道で自殺、事件の背景は闇に消えた形です」(全国紙記者)

さらに警察は、告訴状の改竄などのミスを糊塗しようと、被害者のマイナス情報をメディアに流し続け、「ブランド品依存症の女子大生」などの誤報が流れ続けた。

この事件は、ストーカー犯罪が一般に認知される契機となると同時に、警察への不信感を増幅させる結果となった。

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