年下のイケメン大学生と恋に落ちた美人キャバクラ嬢が、貢いだあげく、ポイ捨てされて、逆上。
男をメッタ刺しにして殺害するという事件が起きたのは、1997年秋のことだった。
加害者となったN・M子(26)と被害者のF・R介(21)が出会ったのは、事件が起きる前年の12月。
M子の勤める都内の店に、R介が客として来たのが始まりだった。
「ねぇ、彼氏とかいるの?いないなら立候補しちゃおうかな」屈託のない笑顔でこう話しかけてくる彼に、上京して間もないM子の心は揺れた。
有名私大の3年生で、野球部に所属しているというR介は180㎝の長身。
ブランドもののスーツを着こなし、日焼けした肌が眩しい爽やかな青年だった。
彼は学生の傍ら、スカウトのアルバイトをしていると語り、六本木にある会社の住所が入った自分の名刺をM子に手渡した。
「店が終わったら、一緒に飲みに行こうよ」
R介の誘いを彼女は快諾。
1カ月後に同棲を始めた2人だが、部屋代はM子が払うことになった。
スカウトマンとしての月収は約30万円あったが、洋服代や遊興費に消えてしまうため、彼はさらにカネをせびってきた。
「じゃあ、もっと稼げる仕事を紹介して。私がなんとかするから」というM子に、R介は新宿・歌舞伎町の性感ヘルスの店を紹介。
週5日、そこで働くようになった彼女は、週に150万円稼ぐ売れっ子になったが、そのカネも彼にほとんど使われてしまった。
そのことを咎めると、怒声とともに殴る、蹴るの暴行を加えてきたが、そのあとのR介は、優しく念入りなセックスでM子と仲直りするのが常だった。
5歳の年齢差を負い目に感じていた彼女は、女出入りの激しい彼にも強い態度は取れなかったが、心の片隅では、彼が大学を卒業したら一緒になれると信じていた。
だが、一流企業に就職が決まったとたん、R介の態度は豹変する。
「もう、お前とは一緒に暮らせない。出ていってくれ」
数日ぶりにアパートに戻ったM子が目にしたのは、床に落ちた女の長い髪の毛と、使い済みのコンドームだった。
M子の中で何かが音を立てて崩れた。
量販店で刃渡り18㎝の文化包丁を購入した彼女は、午後8時に駅前でR介を見つけると、無言のまま背後に忍び寄り、包丁で彼の背中をメッタ刺しにした。
「やめろッ、助けてくれ!」
振り向いたR介の目から急速に光が失われていった。
倒れた彼の体に馬乗りになったM子が、包丁を振り下ろした回数は計19回にも及んだという。