国内外で多発する銃による殺人。
その中には、いまだ犯人が見つからないケースも多い。

被害者はなぜ、そして、どのように殺されたのか?
使用された弾丸と銃撃事件におけるこれまでの例から、その"真実"が見えてくる!



日常生活で日本人が銃に接する機会など、ほとんどない。
しかし、銃規制がされている日本でも、昔から銃による犯罪は起きている。

当時、使用されたのは、狩猟用のライフルや散弾銃が中心だった。
1938年に岡山県の山村で起きた「津山三十人殺し」では、改造した9連発ブローニング式の猟銃が使われた。発射された12番口径の銃弾は国内最大の銃弾で、2時間足らずの間に30人が殺され、直後に犯人の都井睦雄も自殺した。

「猟銃は本来、猪や鹿などを撃つものですから、許可さえあれば銃砲店で買えます。昔は銃の規制もそれほど厳しくなかったでしょうから、入手は比較的簡単だったんでしょう」(全国紙社会部記者)

都井は村人から差別を受けていたらしく、その怨みが切々と遺書に書かれている。
あまりにも凄惨で悲しい事件だった。

近年でも、猟銃による銃撃事件は起きている。
2007年の「ルネサンス佐世保散弾銃乱射事件」では、スポーツクラブに乱入した男が散弾銃を乱射。
男女2人を殺害、6人に重軽傷を負わせた。

使用された銃は、単身自動式の散弾銃「ベレッタAL391」。

「3連射可能な散弾銃ですが、使用されたスラッグ弾は、特殊部隊などがドアノブや蝶番(ちょうつがい)を破壊するときに使用する1粒弾で、"ドアブリーチャー"や"マスターキー"とも呼ばれています。散弾よりもはるかに殺傷能力は高く、危険な弾丸です」(軍事評論家)

犯人は犯行後に自殺したが、ほかにも銃3丁と大量の銃弾を銃砲店で購入していたことが判明している。
犯行時は迷彩服を着ていたなど、"ミリタリーマニア"だった可能性がある。

亡くなった女性は同クラブのインストラクターで、そのクラブに通っていた犯人が、彼女に対して一方的な恋愛感情を抱いていたのではないかと言われている。

現代になると、外国から流入などによって使われる銃も変わってくる。

90年代、銃犯罪で最も汎用されるようになったのが旧ソビエト連邦の軍用拳銃「トカレフ」だ。

これはソ連崩壊後、主に共産圏で使用され、中国製などが日本に大量に密輸された。
「トカレフには安全装置がなく、オートマチック(自動式)の拳銃の中では極めて単純な構造です。拳銃は30口径(7・62㎜)から大型と言われており、トカレフも30口径なので反動は大きいですが、引き金を引けば、素人でも簡単に撃つことができる銃です」(前同)

94年の「青物横丁医師射殺事件」で使われた銃もトカレフだった。

被害者は、以前に犯人の手術を執刀した医師。
自分の体が痛むのは手術ミスがあったからだという、被害妄想に駆られた犯人による惨劇であった。

拳銃は偶然、通りかかった暴力団の事務所に飛び込み、譲ってもらったという。

これらの事件を見てみると、銃による殺人事件は、精神的に追い詰められた犯人の不満が爆発するケースが多いように思われる。

銃の不思議な魅力が、自制心という"安全装置"を外し、怨念を暴発させてしまうのだろうか?



25口径や38口径を使用した思惑は!?


未解決事件についてはどうだろう。

銃による事件の場合、犯人が捕まらなくても、残された弾丸から、ある程度、拳銃の種類が判明する。
そこから拳銃の入手ルートも推測できるし、前出の事件のように、その銃を使うことの思惑が見えてくるのではないだろうか。

ここからは、未解決事件で使われた銃から犯人像をプロファイリングしていきたい。

拳銃を使った未解決殺人。

記憶に新しいところでは昨年の12月、人気餃子チェーン『餃子の王将』の社長・大東隆行氏が何者かによって射殺された事件は、社会に大きな衝撃を与えた。

残された銃弾の線条痕から、凶器は25口径の自動式拳銃だと判明している。

「25口径自動拳銃は、あまりポピュラーな銃ではありません。代表的なものにイタリアの"ベレッタM21A"がありますが、全長125㎜というポケットピストル。主に護身用で、至近距離から急所に命中させなければ、なかなか殺害はできません」(軍事評論家)

殺傷能力が低いことから、強烈な怨恨から、苦しんで死ぬようにこの銃を使ったとも考えられ、そこに、なんらかの"怨恨"があったとも想像できる。

「セミプロまがいの拳銃マニアが殺害を依頼されたといった説もありますが、4発の弾が確実に急所を捉えていることから、銃を扱い慣れたプロ中のプロだと考えられますね」(前同)

珍しい銃ということは入手も困難なはず。
さらに確実に急所を打っていることからプロによる犯行と推測できるが、その計画の緻密さからも、それは窺える。

「犯人は、大東社長が日課としている早朝の掃除の時間を狙い、人目につかない5時45分頃に犯行に及んだと見られます。目立たないように小銃をポケットに忍ばせ、おそらくサイレンサー(消音器)をつけていた。そうなると、物を引きずるようなザッという感じの音しか出ない。誰にも気づかれずに事を済ませ、立ち去ったんでしょう。銃は海に捨ててしまえば、もう証拠は残りません」(同)

持ち運びの利便性を重視。
25口径でも殺害可能と見込んで、計画を遂行したというわけだ。

銃犯罪は90年代半ばから増え始めたが、よく使われるのは38口径の拳銃だ。
なかでも衝撃的だったのは95年、東京・八王子のスーパー「ナンペイ大和田店」で、パートの女性とアルバイトの女子高校生2人が殺害された事件だろう。

このとき使用された銃は38口径、フィリピン製のスカイヤーズ・ビンガムだった。

「この銃は、88年に金沢市で発生した資産家夫婦射殺事件でも使われましたが、この2例しか見当たりません。なぜなら、非常に粗悪な銃だから」(元警察関係者)

粗悪な銃とは、命中率が悪いということ。
弾丸がどこに飛んでいくかわからないが、至近距離で狙えば問題ない。

つまり、「強盗目的ですよ。この銃は池袋や新宿で簡単に買える銃ですし、とにかく安いんです。端っから強盗に入る目的なら、性能のいい銃は必要ありませんからね」(前同)
店の売り上げが保管されている金庫を狙い、銃声が聞こえないように、周囲が騒がしくなる祭りの開催日を選んで実行された。

「女性従業員が金庫を開けられなかったんでしょう。金庫はそのままでした。3人とも銃を突きつけられ、恐怖のあまり身動きも取れない状況だったでしょうね」(同)

一般の人ではなく、要人を狙った未解決事件の場合はどうだろうか。
この「スーパーナンペイ事件」の3カ月前、当時の警察庁長官だった國松孝次氏が自宅を出たところで3発撃ち込まれて瀕死の重傷を負った。ここで使用された銃は、38口径のリボルバー(回転式拳銃)。

英コルト社が開発した"リボルバーのロールス・ロイス"とも呼ばれる「パイソン」だった。

「リボルバーは、オートマチックと比べて構造が単純で故障が少ないため、プロが好んで使用します。使われたのは、長銃身のコルト・パイソン。希少価値が高い銃です」

(元外人部隊の事情通)さらに銃弾は、火薬が多く入っているマグナム弾で、弾頭に切れ目を入れて殺傷能力を高めたホローポイント弾。犯人の目的が殺害だったことが窺える。


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銃弾による警告メッセージ!


また、94年に住友銀行の名古屋支店長が射殺された凶器も38口径の拳銃だ。

「"レンコン"と通称される米スミス&ウェッソン社のリボルバーです。弾倉がレンコンの断面に似ているから、そう呼ばれています。こちらはコルト・パイソンと比べると、普及率が高い拳銃です。スミス&ウェッソンのリボルバーは、実に高性能です。38口径ともなると反動が大きいですが、慣れればわりと扱いやすい、つまり命中率が高いんです。そして、なにより故障が少ない」(前同)

普及率が高いというが、いったい、どこから流出しているのか。

「密輸ルートが多いんですが、日本では米軍基地から流れてきたものも結構あるようです。たとえば、広島の暴力団の抗争で使われたのは、岩国基地から流出した銃だという話もありますからね」(同)

また、この事件は入念に仕組まれた犯行だと見て取れるという。

「犯人はマンションの自室近くのエレベーターホールで、パジャマ姿に裸足の被害者の目を狙っているんです。つまり、至近距離で待ち伏せしていたわけです。犯行時刻も午前7時20分。支店長が毎朝、新聞でも取りに行く習慣があることを下見していたんでしょう。明らかに計画的です。また、わざわざ目玉をぶち抜いているあたりに、何かを意図した住友銀行への強烈な警告メッセージが感じ取れます」(前出・元警察関係者)

警察庁長官のホローポイント弾に、銀行支店長の眼球……権力ある人間の命を衝撃的な形で狙うことに、強烈な意図を感じさせる。

拳銃を用いることで、犯人は特別な人間であるという威嚇的な意味合いもありそうだ。

強い意志を感じさせる事件といえば、87年の「朝日新聞阪神支局襲撃事件」も有名だ。

散弾銃を持った男が新聞社に乗り込み、記者2人に対して発砲、1人が死亡し、1人は指を欠損する重傷を負った。
そのほか、名古屋本社、東京支社にも銃弾が撃ち込まれた。

マスコミには「赤報隊」の名前で犯行声明が送られたため、一連の事件は「赤報隊事件」とも呼ばれている。

「これは明らかに朝日新聞の報道姿勢そのものが許せないという威嚇メッセージです。犯行声明文には"すべての朝日社員に死刑を言いわたす"とありました。阪神支局が狙われたことから、在阪の組織による犯行だった可能性が高いとも言われています。犠牲になった社員は、たまたま休日出勤(犯行日は5月3日)で居合わせてしまったために巻き込まれてしまったんでしょう」(前出・社会部記者)

散弾銃を使うことの意味は、なんだったのだろうか。

「一つは確実に射殺すること、もう一つは銃の出どころを特定させないことです。散弾銃は発射すると、すぐ弾が飛び散るため、狙われたらほとんど逃げようがありません。散弾ですから線条痕も残らない。つまり、使用された銃の特定ができないんです。散弾銃というだけでは、どこの銃砲店でも扱っていますから、そこから犯人には辿り着けないんです」(前出・事情通)

だが、もともと、熊などの大型獣などをターゲットとする猟銃や散弾銃は、重くて持ち運びが不便なことが難点。

「必ず、車が必要となってきます。このときも、犯人は車で移動したんでしょう。27年前だから可能だった犯行ですね。監視カメラが至るところにあり、Nシステム(ナンバー自動読取装置)もある現代では、車両から足がついてしまいます」(元警察関係者)

怨み、威嚇、そして入手ルート……ここまで見てきたように、犯人が残した銃弾には、犯人の素性や意図など、様々な"暗号"が隠されている。

警察ももちろん、その周辺を入念に洗っているのだろうが、いまだに犯人に辿り着いていない事件の数々。

一刻も早い解決を望みたいところだ。

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